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あげる人と奪い取る人

今回は仕事に対する取り組み方について考えてみましょう。

突然ですが,次の奇数番号の文章と偶数番号の文章とでは,どちらの方があなたの考え方に近いですか?

1.一番満足するのは,しなければならないことができるだけ少ない仕事だ
2.仕事をするときに一番重要なのは,ベストを尽くすことだ
3.仕事をして何もしないで何かを手に入れるのが一番満足する
4.手持ち無沙汰な仕事よりも,一日中忙しい仕事のほうが好きだ

追記. equityなので「公平」「衡平」「公正」などいくつかの訳が当てはまるかと思います。ここでは「公平」としています。

全力で取り組む人

何か仕事が与えられると,見返り以上に力を注いで全力で取り組む人がいれば,その逆にできるだけ手を抜こうとする人もいます。

それはなかなか一面的に言えるわけではなくて,手を抜こうとする人も,全てのことについてそうだというわけではない場合もあります。自分が興味を持つ仕事については力を注ぐけれども興味がないと一気にやる気をなくしてしまうとか,十分な報酬があれば全力で取り組むけれども不十分だと全く取り組まなくなってしまう場合があるかもしれません。

公平敏感性

最初に示した質問項目は,公平敏感性という概念を測定する質問項目の一部を書き換えたものです。

公平敏感性(equity sensitivity)というのは,収入と支出や,かけた労力とその見返りといった,自分に入ってくるものと出ていくものに対してどれくらい敏感に捉えているかという傾向のことです。どうも人によって,労力と収入のような収支がどれくらいで満足できるかが違っているようです。

そして,自分から出ていく方つまり労力をかけても見返りをそれほど求めない人から,できるだけ労力をかけずに多くの収入を得ようとする人まで,スペクトラム状に人を並べることができるようです。

見返りを求めない人は,「与える人」でもあります。自分が何かに一生懸命に取り組むのは当たり前だと考えていて,たとえ報酬が見合ったものでなくても自分で納得します。このような人を「Benevolents」(慈悲を与える人)と言うそうです。

その一方で,大きな見返りを期待する人は,「奪い取ろうとする人」でもあります。自分が沢山のものを手に入れるのが当然だと考える人です。このような人のことを「Entitleds」(権利を受ける人)と言うそうです。

さて,最初に示した文章を読めばわかるのではないかと思いますが,奇数番号ができるだけ多くを手に入れようとする人の特徴を示していて,偶数番号ができるだけ与えようとする人の特徴を示していました。

皆さんは,どちらの文章に近いと思いましたか?

性格との関連

公平敏感性とパーソナリティ特性との関連を検討した研究が、この論文(Examining Equity Sensitivity: An Investigation Using the Big Five and HEXACO Models of Personality)です。

この論文では,研究1でビッグ・ファイブ・パーソナリティとの関連,研究2でHEXACOモデルとの関連を検討しています。それぞれについては下のまとめからどうぞ。

ビッグ・ファイブ

研究1では,平均年齢18歳のカナダの大学生499名が調査に参加しました。ビッグ・ファイブと公平敏感性との関連を検討したところ,次のような関連が見られました。

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