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ChatGPTは公認心理師の問題を解くことができるのか

さて,今回も,なんでも答えてくれるChatGPTで遊んでみましょう。

今回は,第1回公認心理師試験問題の最初の5問を,ChatGPTに回答してもらいましょう。果たして,AIは公認心理師の試験問題を解くことができるのでしょうか。

なお問題は,一般財団法人 日本心理研修センターのwebページに掲載されている,「第1回公認心理師試験(平成30年9月9日実施分)午前問題」のpdfファイルより,最初の5問をそのまま抜き出しています。

第1問

最初の問題は,次の内容です。

サイコロジカル・ファーストエイドを活用できる場面として、最も適切なものを1つ選べ。
1 インテーク面接
2 予定手術前の面接
3 心理検査の実施場面
4 事故現場での被害者の救援
5 スクールカウンセリングの定期面接

このままChatGPTにコピー&ペーストします。すると……

あれ?サイコロジカル・ファーストエイドは確かに「心理的応急処置」ですが,それはスクールカウンセリングではないのでは?間違えるのか……。

第2問

気を取り直して次の問題です。

児童虐待について、緊急一時保護を最も検討すべき事例を1つ選べ。
1 重大な結果の可能性があり、繰り返す可能性がある。
2 子どもは保護を求めていないが、すでに重大な結果がある。
3 重大な結果は出ていないが、子どもに明確な影響が出ている。
4 子どもは保護を求めていないが、保護者が虐待を行うリスクがある。
5 子どもが保護を求めているが、子どもが訴える状況が差し迫ってはい
ない。

ChatGPTの回答は次のとおりです。

うーん,これも答えが違うのでは……(正答はネット等でご確認ください)。1は一時保護で緊急一時保護ではない,というひっかけ問題にひっかかった?

第3問

次にいきましょう。

14 歳の女子 A、中学生。摂食障害があり、精神科に通院中である。 最近、急激にやせが進み、中学校を休みがちになった。A の母親と担 任教師から相談を受けた公認心理師であるスクールカウンセラーが、A の学校生活や心身の健康を支援するにあたり、指示を受けるべき者とし て、最も適切なものを1つ選べ。
1 栄養士
2 学校長
3 主治医
4 養護教諭
5 教育委員会

事例の形式になっている問題です。ChatGPTは内容を理解できるのでしょうか。出力された回答はこちらです。

これは正しく答えることができたようです。

第4問

次は,森田療法に関する設問です。

森田療法について、正しいものを1つ選べ。
1 「精神交互作用」の過程を重視する。
2 創始時に多く適用された対象は、統合失調症であった。
3 あるがままに受け入れるアプローチは、「身調べ」に由来する。
4 原法の絶対臥褥(がじょく)期では、読書は行ってもよいとされる。
5 「ヒポコンドリー性基調」とは、注意が外界に向けられ他者に敏感である状態をいう。

ChatGPTに答えてもらいましょう。

いや,違う……。

あ,でも,これは文章の微妙なひっかけのニュアンスをChatGPTが自分で気をつかって解釈してしまったのでしょうか……?「見調べ」を勝手に「誤記した」と判断して,ChatGPTが気をつかって「身体感覚」に置き換えてしまい,結果的に誤答になったように思えます。

第5問

次の問題にいきましょう。

オペラント行動の研究の基礎を築いたのは誰か。正しいものを1つ選べ。
1 A. Adler
2 B. F. Skinner
3 E. C. Tolman
4 I. P. Pavlov
5 J. B. Watson

これなら大丈夫でしょう!

自信満々の答えですね!「どうだ,決まったぞ」みたいな。

難しい

ChatGPTが公認心理師になるには,まだ時間がかかりそうです(単に「時間の問題」かもしれませんけれども)。しかしそれにしても,ChatGPTの問題の間違え方は,「とても人間的」だというのも正直な感想です。

そして,ChatGPTが自信満々に知ったかぶりをして,詳しく間違った解説をしてしまうこともわかります。あまりに堂々と間違えるので,「そっちが本当だ」と勘違いする人が出てくるかもしれません。

とりあえず当面の間は,公認心理師の試験勉強にChatGPTを使うのはやめておいたほうがよさそうだ,ということは言えそうです。

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