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独裁者ゲームと性格特性

実験参加を依頼されて,あなたは実験室の中に入っていきます。そこに,白衣を着た実験者が入ってきます。部屋にはついたてが立てられています。もう一人の参加者がついたての向こうに座っていて,あなたと一緒に実験に参加していると伝えられます。

まずくじを引くように言われます。くじを引いて,あなたともう一人の参加者が「提案者」と「受領者」に分かれます。あなたは提案者になりました。

実験者から,あなたは1000円を受け取ります。この1000円を,ついたての向こうにいるもう一人の参加者と分けるように言われます。分けられたお金は,そのまま受け取ることができると言われます。

あなたは,いくらを相手と分配するでしょうか。金額を答えてみてください。

独裁者ゲーム

このようなゲームを,独裁者ゲーム(dictator game)といいます。非常に単純なルールで,お金を分配するだけのゲーム(研究の中ではこういうのもゲームというのですよね)なのですが,なかなか面白い現象が観察されます。

どのようにお金を分配しても,結果そのままお金を得ることができるのですから,自分が999円,相手が1円と提案しても問題はないはずです。

ところが多くの場合,おおよそ半々で分ける人が多くなるそうです。


利他性

独裁者ゲームの配分が何を意味するのかについてはさまざま議論があるとは思うのですが,相手への配分の大きさが利他性の表れだと考えることもできるようです。相手に大きな金額を送るほど,他者への配慮が大きかったり,利他的な傾向の表れであったりすると解釈するというわけです。

進化の観点から,利他主義には血縁を背景とする説明と,互恵的利他主義という説明があります。血縁を背景とする説明は,近親者のために自分の資源を多く配分したり,近親者と別の人を見分ける能力が発達したりするなど,近親者の生殖を助けるために利他主義が進化したと考えられます。互恵的利他主義は,将来的に同じような援助を互いに提供してくれそうな関係のない他者のために犠牲を払おうとすることです。

性格との関連

もしも独裁者ゲームが利他性の表れであるなら,パーソナリティ特性がゲームの結果に関連するかもしれません。これまでの研究では,利他的な傾向は外向性とプラス,神経症傾向とマイナスの関連を示す傾向が報告されています。

ただし,もしかしたら直線的な関係ではないかもしれません。また,ゲームの相手がどのような関係であるかによっても変わる可能性があります。その当たりについて検討した研究がありますので,この論文を見てみましょう(Personality and altruism in the dictator game: Relationship to giving to kin, collaborators, competitors, and neutrals)。

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