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見えないものを知るには色々な方法がある

今回の記事の内容のようなことは,ひとつの頭の体操だと思ってもらえればと思います。

何か曖昧なものを把握しようとすることは,研究をするときだけに試みられるものではありません。テレビ番組の中でもよく試みられますし,普段の生活の中でも考えるべきことがある可能性があります。ゲームをしてみたり,審査をしてみたり,クイズに答えたり,観察したり,さまざまです。

特に,抽象的な何かを測定するときには,その測り方が複数あるということを考えておくことは大切だと思います。

お笑いコンクールの審査

たとえば,お笑いコンクールの審査をするときのことを考えてみましょう。何組かの参加者がいて,その中でチャンピオンを決めます。そんな時にも,複数の審査方法が浮かびます。

1. 複数の審査員が得点をつけて合計する
2. 会場の観客が投票し,投票数を数える
3. テレビを見ている視聴者が双方向機能を使って投票する
4. ネット中継を見ている人がウェブサイトで得点をつける
5. 会場にいる観客の笑い声の大きさや頻度を測定して得点化する
6. 大会に参加している芸人さんたちがお互いに評価する
7. 自分で自分のできばえを評価する

他にも審査方法はありそうです。ぜひ,考えてみてはどうでしょうか。

確実に測定できそう?

複数の方法を考えてみたら,次に「どれが測りたいことをちゃんと測れそうで,どれが測れなさそうか」を考えてみるというのはどうでしょう。

たとえば審査員が得点をつけて合計することと,観客の笑い声の大きさと,自分で自分のできばえを評価することを考えてみると,どれがより「確実にお笑いの能力が技術を反映」していると言えるでしょうか。

このように,複数の測定方法を並べてみると,なんとなく「これは上手く測れそう」「これはいいかげんな結果になってしまうのではないか」という感覚を得ることができそうです。

簡単に測定できそう?

では,測定の容易さという観点から見たらどうでしょうか?その方法がどれくらい簡単か,ということです。

テレビを見ている人が投票するにはテレビの中継が必要ですし,観客の笑い声で判定するならそもそもお客さんがどれくらい入っているかによっても結果は変わってしまいそうです。審査員が評価するなら,誰に審査をお願いするのかという問題も生まれてきます。

きっと,自分で自分を評価する,というのが一番簡単なのかもしれませんね。

トレードオフ

このように考えてくると,ちゃんと測定しようとする試みは,たいてい「大変な労力がかかる」のではないかという印象を抱きます。

簡単に測定できそうな方法は多くの場合「いいかげん」な方法で,ちゃんと測定できそうな方法は,なんとなく準備も手間もお金もかかりそうです。

このあたり,完全な関係ではないのですが,トレードオフがあるように思います。厳密さを求めればあれこれと考えることが多く,時間もコストもかかります。その一方で,いいかげんでよければあまり多くのことを考えなくても良い,といった関係です。

簡単で確実

このように考えてくると,いちばんいいのは,「より簡単で確実」な測定方法です。

じゃあ,どうすればよいのでしょうか。トレードオフが完全に成立しているならば,簡単な方法ほど「いいかげんな測定」になってしまいます。でも,そのトレードオフは完璧なものではありません。もしかしたら,そこそこ確実に測定できる,より簡単な方法があるかもしれません。

妥当性の検証

ということを考えてくると,何かを測るときに考えるべき妥当性とはどういうものかをイメージしやすいように思います。

複数の測定方法の間の関連や一致を考えてみれば良い,ということです。

自分の面白さを自分で評価することが,審査員の得点や,会場の笑い声や,他の芸人さんの評価や,ネット上の評価や,テレビを見ている人の評価にある程度一致していれば,その自分で自分を評価した内容は,妥当な結果である可能性があるということです。

ですので,複数の方法を考えてみて,その間の関連を調べてみるのがひとつの方法だ,ということになります。できれば,何とか統計的な結果に結びつくような方法を考えて,複数の方法の間の関連を数値化できると良いでしょう。

基本的に,心理学の研究の中で行われる「妥当性の検証」というのも,こんな考え方ではないかと思うのです。

他のことでも

他のことでも同じような考え方をします。

たとえば,抑うつの程度を自分自身で評価するチェックリストを作るのであれば,その「自分で自分を評価した」結果と,医師の診断や他の人が評価した結果と照らし合わせて関連を検討することで「妥当性」を検証します。

コロナウィルスに感染しているかどうかを簡単に測定する検査であれば,唾液などから測定した結果と,本当に感染したかどうか他のより確実な検査結果や経過観察,医師の診断と照らし合わせて「妥当性」を検証します。

簡単で確実

ここにあるのは,

◎簡単であること
◎確実であること

のバランスを評価するという考え方ではないでしょうか。

労力がかからずちゃんと状況が把握できる,「簡単で確実な方法」というのが,より価値があると言えそうです。

もし機会があれば,何かを把握しようとしている時に複数の把握の仕方を考えて,それぞれの方法について,労力と確実さを考えてみてください。


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