社会が多様になると人々は均質化していく?

世の中が変化していくと,思わぬところで予想とは違う結果が生じることがあります。

ネットの普及

たとえば,「ネットが普及すると人々は均質化していくのではないか」,という考え方です。ネットで人と人とがつながれば,そこで交流が起きていきます。多くの人がつながっていくと,次第に人々は同じような知識をもち,同じような考え方をするようになっていくだろうと予想されるというわけです。

これについてはどう思うでしょうか?

ネットが普及すると人々は均質化していく,という話は,ネットが普及し始めた頃によく見聞きしたように思うのですよね。

でも,結果はどうでしょうか。

十分にネットワークが普及すると,人々は自分がやっていること,興味のあること,勉強していることで互いにつながっていきます。すると,価値観や趣味は多様化していき,それぞれの人間関係を形作っていくようになってしまいます。そして,グループ同士は互いに無関心になっていくことで,ますますそれぞれの人は自分が居心地のよう場所にいてそこから出ないような状況になっていきます。

ビッグヒット

同じようなことは,歌の大ヒットが出にくくなる傾向にも表れているのではないでしょうか。1990年代くらいまでは,多くの人が知っている曲があったように思うのですが,21世紀に入ると「1位の曲もあまり知らない」というケースが増えていったような印象があります。

これも,テレビやラジオを通じて多くの人が一斉に曲に触れるのではなく,ネットが普及して好みが多様化することで,それぞれの人が自分の好きな曲を聴くようになっていったことが表れているのではないでしょうか。さらに最近は,多くの人がネット配信で曲を聴くようになっていますので,ますますその傾向に拍車がかかっているかもしれません。

社会的多様性

世の中が多様になると,やはり人々はセグメントに別れてバラバラになっていくのでしょうか。

たとえば,確証バイアスということを考えてみましょう。これは,自分が信じている情報にアクセスしやすく,それに反する情報にはアクセスしにくくなる認知バイアスです。確証バイアスは私たちの活動を強く規定しています。私たちがバラバラになれば,それぞれが自分の信じる情報に基づいて,どんどんバラバラな状態になっていくと想像されるわけです。

その一方で,世界が多様化していけば,複数のグループに所属する個人も増えて行きます。私たちは複数の場所を簡単に移動できますし,個人の中で別々の価値観が融合するような結果が生じるはずです。

果たしてどちらが実際に生じることなのでしょうか。

多様性はステレオタイプを?

この論文(As diversity increases, people paradoxically perceive social groups as more similar)では,さまざまなデータを用いて,世の中で多様化が進むと人々が抱くステレオタイプが増えて行くのか,それとも減少するのかを検討しています。

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