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同じテーマの本を3冊読んでみてはどうかという話

「同じテーマの本を3冊読むと良いですよ」ということを,よく言っています。これは,小説などを読むときの読み方ではなく,知識を定着させるための本の読み方の場合です。

小説の場合には,新しいストーリーや展開を楽しむものですから。もちろんシリーズものもありますが,それでも同じようなストーリー展開というわけではないと思います。

ですので,ここで書くことは知識探求型の読書についてです。

あるテーマについて書かれた本を1冊読むと,その中にはためになりそうなことがあれこれと出てきます。

それはとても勉強になることなのですが,あるテーマについて,全ての情報が含まれているわけではありません。その内容というものは,著者によって取捨選択されていたり,説明が偏っていたり,間違っていたりするかもしれません。本の著者も完璧ではありませんので(そして内容をチェックするであろう編集者も),必ずそういうことは生じます。

同じようなテーマについて,異なる著者が書いた本を何冊か読んでいくと,書いてあるネタについて相互に重なりが生じてきます。できればそのテーマを別の観点から書いた複数の本であればさらに良いと思います。

それは,少しズレている複数の円が重なってくるようなイメージです。すると「ああ,これは知っている」というように,知識の蓄積が確認されていくのです。

もちろん,複数の本を読んだ後でも,まだ新しい発見はあります。それも,さらに読んでいって情報が重なってくれば,「これも知っている」「あれも知っている」というように知識の定着が積み重なっていて,その自分の状態を確認することができます。

「知っている内容だからこの本に価値がない」のではないのです。「この著者もこの知識を使って書いているのか」ということを認識できれば,知識の出所に目が向いたり,いまどのような知識が基礎になってそういった本ができているのかがわかるようになっていきます。

難しい本を3冊読まなくても良いと思うのです。同じようなテーマの新書を3冊読んでみれば良いと思いますし,入門段階は「○○がわかる」的な本でも構いませんし,「マンガで学ぶ」的な本でも良いと思います。何冊かのうち1冊を,もう少しボリュームのある本にしてみてはどうでしょうか。

できればその本には,引用文献リストが載っていてほしいものです。参考文献ではなく,この部分はこの文献の知識から書いている,ということを示す引用文献です。そうすれば,その本のその一節を書いた知識がどこから得られているのかが,はっきりします。すると,その文献リストからさらに文献を選んで読んでいくことができます。

きっと,知識が蓄積してきたときには,よりボリュームのある本も読みやすくなっているはずです。

速読術というのは魅力的ではありますが,一番の速読術は読んでいる本の背景にある知識を身につけることです。私自身も,全く知識がない分野の本や論文を速く読むことはできません。

知識を身につけることは,その体験を楽しくすることにもつながります。スポーツでも楽器でも趣味でも,知識や技術が積み重なってくるとより楽しめるようになります。それは読書も同じです。実は学問も同じなのですけれども。

ネットの記事はどうか,という場合にも同じ事が言えます。できるだけ複数の記事に目を通すことですね。ただし,この記事もそうなのですがネット上の情報はどうしても本に比べてボリュームが少なくなります(経験上,ネット上で内容が多い記事を読む動機づけは,本とは比べものにならないくらい低くなります)。

そして,検索で引っかかってくる情報から自分で取捨選択する際に,どうしても自分にとって読みやすい,理解しやすそうな記事を選択する傾向があります。それは自分の知識のチェックにとってあまり良いやり方だとは思いません。「これも知っている」という状態には陥りやすいのですが,それは検索結果から情報を選ぶ段階で知っているものだけ,馴染みのあるものだけを選択しやすいからなのです。

それは確証バイアスに至りやすいひとつの経路です。

もしも論文を読むのであれば,それもここまで書いたように,テーマに沿って複数のものを読んでいくのが良いと思います。1つの論文だけを読むのとは違う,輪郭のようなものが見えてくることでしょう。

ここからは,漠然と考えている個人的な意見ですが......。

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