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OJTと学校教育

OJTと略されることもありますが、On the Job Trainingとは、現場で働きながらトレーニングしていくことです。日本の企業では、現場に出てOJTで学んでいく、ということが多そうです。

まず、とりあえず現場に出て学んでいきましょうか、という仕事のトレーニング・スタイルですね。

入試業務の経験

私自身もそうでした。

就職して初めて入試を担当した時のことです。ほとんど説明も受けずに試験会場になっている教室に行って、補助に入った事務の方からいきなり「はい、では先生、ここからよろしくお願いします」と促されて教壇の上に立たされて「おっと、マジですか……」と焦ったことをよく覚えています。すかさず試験マニュアルを開いてセリフを探して事なきを得ましたが……そういう経験を現場で繰り返して、自分なりに学んでいくというわけです。

失敗を許す

何となく、「現場で学ぶ」というのは望ましいニュアンスも含まれているように思います。そういう場合には、多少失敗しても許してくれるような余裕や雰囲気があるとやりやすいですよね。「失敗するのは許されない」という現場でOJTをされると、どうしようもなくなってしまいそうです。

最近は失敗を許さない風潮も高まっていますので,場面によってはやりにくいことなのかもしれません。

学校の中

でも考えてみれば、日本の学校教育のなかでもOJTのような教え方が多いのではないでしょうか、と思うことがあるのです。また,このやり方はある程度できる人にとっては良いのですが,一から学ぶ場合にはとても大変なやり方だと思います。

たとえば体育の授業では、基本的な走り方や泳ぎ方をあまり習うことなく、とにかくいきなりタイムを測ったりします。どれだけ泳げたら何級、ということは決まっているのですが、そこまで到達するためのやりかたをちゃんと習ったり練習したりすることはあまりなさそうな印象です。

縄跳びも同じ。飛び方をちゃんと習うことなく、とにかく何回飛んだら何級、と試験だけ設定されます。子どもたちは自分で練習したり父母に教えられたりしながら、なんとか飛ぼうと練習します。授業や学校の外で。

鉄棒もそうです。学校ではいきなり「はい、逆上がりやって」と言われて四苦八苦してしまいます。できない子ができるようにやり方を習ってできるようになる、というよりは、家に帰ってから近所の公園に行って一生懸命練習することが多いように思うのです。

習字もそういうところがありますよね。冬休みの前になると「では書き初めを書いてきてね」と言われて、冬休みに苦労することになります。ふだん習字を習っている子はよいのですが、習っていなければ家で四苦八苦することになります。

読書感想文を書くときなんかもそうではないでしょうか。夏休みの読書感想文を書く前に、文章の論理構造やコツを習うということはあまりなさそうです。そんなにちゃんと文章の書き方を習うこともなく、さあとにかく書いてみましょう、というケースが多そうなのです。

子どもたちの様子を見ていても、なにかのコツややり方や手順をしっかり学んでひとつずつできるようになる、というよりは、「とにかくやってみよう」「やったらレベルを判定します」というアプローチが多い印象があるのです。もちろん、そうではないことも多いとは思いますけれども。

トレーニングを家庭に

こういうことがあるから、水泳教室や習字教室に行き、家で親が鉄棒や縄跳びをつきっきりでできるまで付き合う必要があるのです。そういう点で、こういうことができるかどうかには家庭の要因が大きくかかわってきてしまうのではないかと思います。それは公平なことなのでしょうか。子どもにかけることができる親の資源には限界があります。

ああ、でも、子どもを育てていると、本当にそういうことは多そうだなと思うことがあります。これは社会がどこまでそれを担うかという問題であるとともに、「それは家庭の問題」なので「関与しない」という態度で良いのかという問題でもあります。

いずれにしても、学校でも仕事でも「現場で学べ」という形が多いことが気になったというお話でした。

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