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2019年に読んだ本のまとめ1

今年読んだ本を何回かに分けてまとめてみたいと思います。今日は,世の中のことを知ることができる,古い本と新しい本です。

フィラリア

まずは25年くらい前の本(!)なのですが,とても面白かったものです。『フィラリア―難病根絶に賭けた人間の記録』というタイトルです。

フィラリアといえば犬の病気を思い浮かべます。実家で飼っていた犬を,フィラリアで死なせてしまったこともあります。心臓に寄生虫が湧いてしまって,最後は衰弱して死んでしまいました。

今ではもう根絶されていますが人間にもフィラリアが寄生していて,その症状からいろんな名前で呼ばれていたのです。その特徴は体の一部が「皮が硬くなって巨大化する」ことです。

 こうした報告をまとめ,各国の医師たちは,
 象のように太くなる足のことを「象皮病」
 陰嚢が大きくなることを「陰嚢水腫」
 乳房が大きくなることを「乳房肥大」
 尿が白く濁ることを「乳糜尿」
 と名付けた。
 しかし,「この病気」の総称名は決められなかった。
 医師たちは,天然痘,マラリア,そして「この病気」の三つを「世界三大風土病」と称するようになった。

この症状,昔の文献なんかに男性の大事なところを二人かがりで抱えているような絵が残っていたり,今ではまず見ることがないような姿として描かれています。

それからこの病気にかかっていたということでよく知られているのは,西郷隆盛です。死んだ時にも本人かどうかを確認するために,下半身をチェックしたとか。

しかし,一部の土地では風土病として当たり前の姿になっていて,その治療のために多くの苦労があったということです。

 日本の医学界にフィラリアが初めて発表されたのは,1976(明治9)年だった。東京大学に来たエルウィン・ベルツが患者の血液からミクロフィラリアを発見した。ベルツは,1876(明治9)年〜1905(明治38)年にかけて日本に滞在し,日本の近代医学に大いに貢献したドイツ人の内科医である。明治政府は近代国家を目指すために,従来のオランダ医学からドイツ医学を採用し,ドイツから来た優秀な医師を何人か東京大学に招き,講義を行わせた。
 第二次大戦が終了しても,フィラリアは世界の多くの医学者を悩ませていた。何と言っても,治療方法と治療薬がさっぱり見当たらない。当時,世界の人口30億人ほどのうち,最低で5億人が罹患しているといわれ,医学者の間では「この薬が効くらしい」「効くかも」という噂や直感があれば,すぐに投与して様子を見守ったが徒労に終わった。新薬の開発への道も見当たらず,フィラリアは「不治の病」として君臨していた。

この「不治の病」がどのように治療されていったのかが丁寧に描かれています。こういうことがあって今私たちは当たり前のようにこの病気に悩まされることなく暮らすことができているということが実感できます。とても面白いのでぜひ読んでみてください。

事実を知ろう

次の本は,2019年に出版されて話題になった,『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』です。もう読みましたか?

この本はTEDトークでもよく知られているハンス・ロスリング先生の遺作となったものです。ご存じない方はぜひ動画を検索してみてください。とても魅力的なトークです。

そしてこの本も動画も,私たちがいかに世の中のことについて無知であるのかを知らしめてくれます。「当たり前だ」と思っていることは,時に大きく間違えているのだということを知ることができます。

 わたしは,頭の中に「悪い」と「良くなっている」という2つの考え方を同時に持つようにしている。
 何かが「良くなっている」と聞くと,「大丈夫だから,心配しないで」とか「目をそらしてもいい」と言われている気になる。しかし,わたしは「世界は良くなっている」とは言っているが,「世界について心配する必要はない」とは言ってはいない。もちろん,「世界の大問題に,目を向ける必要はない」と言っているわけでもない。「悪い」と「良くなっている」は両立する。(p.90)

情報に対してどういう態度をとると,間違いを防ぐことができるのでしょうか。この本には5つの方法が書かれています。

「自分の分類の仕方は間違っているかもしれない」といつも疑ってかかったほうがいい。よく使ってしまう分類を,常に見直し続けるのに役立つ5つの方法を紹介しよう。(1)同じ集団の中の違いと,違う集団のあいだの共通点を探すこと。(2)「過半数」に気を付けること。(3)例外に気づくこと。(4)自分が「普通」だと決めつけないこと。そして,(5)ひとつのグループの例をほかのグループに当てはめていないかを振り返ること。(p.204)

そして,やはりこうしたことは子どもたちにも伝えていきたいことです。「謙虚さと好奇心」は,大人でも子どもでも,失いたくないことですね。

 なによりも,謙虚さと好奇心を持つことを子供たちに教えよう。
 謙虚であるということは,本能を抑えて事実を正しく見ることがどれほど難しいかに気づくことだ。自分の知識が限られていることを認めることだ。堂々と「知りません」と言えることだ。新しい事実を発見したら,喜んで意見を変えられることだ。謙虚になると,心が楽になる。何もかも知っていなくちゃならないというプレッシャーがなくなるし,いつも自分の意見を弁護しなければと感じなくていい。
 好奇心があるということは,新しい情報を積極的に探し,受け入れるということだ。自分の考えに合わない事実を大切にし,その裏にある意味を理解しようと努めることだ。答えを間違っても恥とは思わず,間違いをきっかけに興味を持つことだ。「どうしてそんな事実も知らなかったんだろう?この間違いから何を学べるだろう?あの人たちはバカじゃないのに,どうしてこんなことをしているんだろう」と考えてみることだ。好奇心を持つと心がワクワクする。好奇心があれば,いつも何か面白いことを発見し続けられる。(p.316-317)

まだ読んでいないのでしたら,ぜひ開いてみて冒頭のクイズに答えてみてください。

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