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イタ電

これは昔、とある人から聞いた話。

バイトから独立して自分で商売を始めたころ、バイト先の社長にこう言われた。
「▲▲くんも、とうとう自分で商売始めたかあ。電話はもう引いたんか?色々とイタ電(いたずら電話)、かかってくんで〜。」

今のところいたずら電話なんかはかかってこないから、社長の電話の引き方がおかしいんじゃないの?と思っていたら

「俺も事務所に電話引いて始めの頃、気色悪いイタ電かかってきたわぁ」と。

ちょっと興味があったので「どんな電話ですか?」と尋ねたところ、社長いわく嫌がらせで、毎晩夜中の0時きっかりに無言電話がかかってきたとのこと。
その頃の社長は忙しかったから、毎日事務所で寝泊まりしていたが、夜中の0時にきっかり3日ぐらい続いたそうだ。

4日目ぐらいにまた電話が鳴ったので、またかと腹を立てながら受話器をとったら、案の定、いつもの無言電話である。

いつのならすぐにそこで受話器を置くところだが、よく聞いてみると、なにやら無言電話の向こうで音が聞こえる。
何かと思い、耳を澄ますと、トントントンと何やら料理する音である。お母さんが料理している音らしい。部屋の音がかすかに聞こえる。
そのうち、小さな音で、「◯◯ちゃ〜ん、電話で遊んだらだめよ〜。」という声が。
で、さっきより近いところで「はぁい」という声と、ゴロンと電話機が転がる音が。

一回気になると受話器を置く気になれない。
更に耳をすまして電話の向こうの音を聞いていると、なにやら様子がおかしい。今は夜中の0時なのに向こうの様子は昼間のような感じ。家事のトントントンという音。更に耳を済ますとTVの音も聞こえる。

TVから流れている音をよく聞くとニュースが流れているらしい。
アナウンサーらしき声が流れている。
「○○県に原爆が落ちました」と。「本日・・・○○に投下された原爆が・・・」

「えっ?何やこれ?」と思っていたら、急にゴロン!ガラガラガラと大きな音が聞こえた。

「うわっ!」と思って一旦受話器を耳から離し驚いていると、電話の向こうはまったくの静寂。

もう一度受話器に耳を当てて耳をすまして聞いていると、なにも聞こえなくなった静寂な向こうから小さな声が。
「たつや・・・たつや・・・・」と聞こえる。

子供を呼んでいるようだ。その声が段々と近づいてきて、最後に電話のすぐそばで
「たつや!」と。

そこでヤバイと思って電話を切った。
社長いわく「なぁ?気色悪い、いたずら電話やろ?(笑)」と。

ちなみに社長はオカルトの類を一切信じない人で、少しも怖がる素振りをみせなかったという。

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