新宿や さて 新宿や 新宿や
この句にはちょっと薀蓄を語らねばならない。
ご存知の「松島や ああ松嶋や 松嶋や」を捩ったのであるが、まずこの句はよく芭蕉の句と誤解される。
これは芭蕉ではなく、江戸後期に活躍した狂歌師・田原坊の作である。
芭蕉も松島を「島々や千々に砕きて夏の海」と詠んだが、「おくのほそ道」には示していない。
師のいはく、「絶景にむかふ時は、うばはれて不叶。ものを見て、取所を心に留て不消。書写して静に句すべし。うばはれぬ心得もある事也。其おもふ処しきりにして、猶かなはざる時ハ書うつす也。あぐむべからず」となり。師、まつ嶋に句なし。大切の事也。「三冊子」わすれみづ
とある事から、芭蕉は意識的に松島の句を残さなかった可能性もある。
「景にあうては唖す絶景の前では黙して語らず」
であり、見るよりも撮る事を優先してしまいがちな自分には「戒め」として記憶すべきであろう。
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