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Yes, We Can.

今、何を企むべきか。

お話を聞いたのです。ビジネスデザイナーの佐々木康裕さんに。
デザインイノベーションファームTakramで、ビジネスとデザインを接続しながらあらゆる企業の事業課題に取り組まれています。デザインという言葉は多義的であるがゆえに時にその取扱いに茫洋とさえしてしまうのですが、デザイン畑でない出自でありながらデザイナーの旗印を掲げることの決意と重みを敬意を込めて感じます。それだけでなく、エンジニア起業家を支援するベンチャーキャピタル「Miraise」の投資先メンターを務められたり、世界の変化の種をキュレートするスローメディア「Lobsterr」を起業したり、グロービス経営大学院でデザイン経営の教鞭を執られたり、中川政七商店の代表とビジョナリーブランディングチーム「PARADE」を立ち上げたり、武蔵美の岩嵜教授と共著で「パーパス~意義化する経済とその先~」を出版したりと、活動は大変マルチで多岐に渡るのですが、躍動的に動きながらもピボットの軸足になっているのはTakramで、その大いなる推進力となってデザインとビジネスの知見を組み合わせた領域横断的なアプローチで、多種多様なステークホルダーに対してエクスペリエンス起点のクリエイティブ戦略や事業コンセプト立案に邁進されています。


ビジネスとデザイン、異国のデート。

近年、ビジネスとデザインがいい関係にあります。お互いに欠けていたものが補完され合うように感じ、双方魅力的に相手をハートマークで見ている状態。雑に言えば、僕の通っている武蔵美の造形構想研究科も同じような機制で生まれているといって過言でありません。いわば、恋です。素敵な恋なのですが、この恋が美しく成就しているカップルをまだ巷でそんなに見かけません。惹かれているのにお互いの言葉が通じない、なんてもどかしい声も聞こえます。そんな社会のトランジションフェーズに、柔軟に力強く縁結びをしているのが佐々木さん。そのルーツは、Institute of Design、イリノイ工科大学です。キャリアは伊藤忠商事からスタートされておりビジネス最前線。でもこのIDで佐々木さんは飛翔します。いろいろと同院卒の方の話を聞く機会がありますが、彼の目はビジネス的視点を多分に含んでいるのでとてもリアルで実践的。IDにはイノベーションを起こすイリュージョンがある、なんて煙に巻かれるような話は一切ありません。まずシカゴが東海岸でも西海岸でもなく、同質性が高くて歴史ある大企業が多いので、アメリカでも中国でもなく同族的な日本と似ているのだ、と。もうすでに、へえ!ボタンです。


可能性を、本気で広げていく。

さらに、デザイン思考だけじゃなくて論理も大事、とか、クリエイティビティなんて要らないんだ、とか、驚きながらもビジネス畑出身の佐々木さんは合点がいった、と。ご本人がそれぞれ、“超・多様性”・“創造性非依存の再現性あるアプローチ”と解説してくれます。「正しいプロトコルを持つ10名の海兵隊員が生むアウトプットは、世界で最も創造的な10名に上回る」、とまでのたまう教授もいて、アメリカが自由の次に愛するのは科学だと納得です。そんな学び舎で、学長が言うのです、と。世の中には問題が2つある、“Puzzle”と“Mystery”だ、と。前者はビンラディンで答えがあり、資源投入と論理思考で解決可能。後者はアフガンで答えがなく、解決が必要とするのはプロトタイピングと多様な思考の組み合わせだ、と。佐々木さん、IDはデザインスクールの皮を被ったビジネススクール、と笑います。そんな学びを経てTakramの最前線に立ちながら尚、彼はビジネスとデザインの掛け合わせだけでは足りない時代と言います。ビジネスは総合格闘技化しており、グローバルアジェンダとの接続は不可欠。だからこそクリエイティブの意味を拡張しながら学び続けなければならないと教えてくれます。意味を拡張し続ける。定義を刷新し続ける。それは可能性を本気で広げていくこと。加速していく答えのない世界に、答えの出し方ばかり教わってきた自分が、どう社会にコミットして新しく生きていくべきか。佐々木さんが教えてくれたように思います。


武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダーシップコース クリエイティブリーダーシップ特論/第14回/佐々木康裕さんの講義を聞いて 2021/10/11

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