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井上結理さん個展「私への物語」

7月2日から京都のギャラリー「KUNST ARZT(クンストアルツト)」にて、井上結理さんの個展「私への物語」が開催されています。

私への物語

会場の真ん中に置かれた一冊の本には、A T G C の四文字がランダムで記されています。ページをめくってもめくっても、最初から最後までずっと。
 
この作品は、アーティストが脱ぎ捨てた衣服に付着した体液からDNAを抽出し、ATCGの組み合わせによる30億文字の塩基配列を、いわば作者自身の肖像として表現したもの。
 
展示されている本にはその一部が印刷されているのだそうです。
 
井上結理さんは一日の終わりにその日着ていた服を脱ぎ、写真に収める「NUKEGARA」というシリーズで知られているアーティストで、今回の作品はその発展形といえるのでしょう。
会場には「NUKEGARA」シリーズの写真作品も展示されていました。
 
毎日の記録と存在をリンクさせる表現は、河原温の「Today」シリーズや「One Million Years(百万年)」、アイ・ウェイウェイの「念念」といった作品を彷彿とさせます。

キャンバス、油彩


真っ白なキャンバスに白い絵の具で塩基配列が描き写された作品は、よく見ると壁にも文字が続いていて、永遠のような果てしなさに圧倒されてしまいます。
写真ではなく、実際に、作品を見るとその感覚がきっとわかっていただけるはず…。
 
私はこの作品、とてもロマンチックだなと思いました。1人1人違うというDNAの30億文字を、世界にたったひとつ自分のために贈られた詩のように感じたのです。
 
そういえば、世界的に人口が増え続けるなかで、墓地不足になるのでは?という記事を読んだことがあります。もしそうなら、私は30億文字の塩基配列を記したデータを墓標にしたいな。
 

ギャラリー「KUNST ARZT(クンストアルツト)」のオーナーは、アーティストの岡本光博さん。とても居心地が良く、通いたくなるギャラリーでした。

入り口には「芸術(KUNST) 医者(ARZT)」に由来する薬の錠剤のロゴマークが掲げられています。

立地は地下鉄東山駅から徒歩5分ほど。近くには京都国立近代美術館や京セラ美術館などがあり、アートの雰囲気にどっぷり浸れます。

■開催概要
井上結理 個展「私への物語」
2023年7月1日(土)~9日(日) 
12:00~18:00(月曜休)
KUNST ARZT:京都市東山区夷町155-7 2F
http://kunstarzt.com/


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