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ACL再建術後の再断裂を防ぐには? - 競技復帰のタイミングと心理面に注意

ACL損傷後の再建術は一般的な治療法ですが、術後に再びACLが断裂する「ACL再断裂」がしばしば問題となります。ACL再断裂のリスク因子として、年齢の若さや活動レベルの高さなどが知られています。しかし、リハビリテーションの観点からACL再断裂群と非再断裂群を比較した研究はあまりありません。

スウェーデンの研究チームは、ACL再断裂36人と再建術のみ108人の患者を比較検討しました。その結果、ACL再断裂群は術後8-12ヶ月時点で、競技復帰に対する心理的準備性と膝関連自己効力感が高く、高負荷のスポーツに早期復帰していたことがわかりました。

具体的な結果は以下の通りです。

  • ACL再断裂群は、一次ACL再建術後8ヶ月時点でACL-RSIスコアが81.2点、12ヶ月時点で95.2点と、再断裂しなかった群(それぞれ67.9点、67.1点)に比べ有意に高かった。

  • ACL再断裂群は、8ヶ月時点で膝関連自己効力感(現在)が8.6点、12ヶ月時点で9.4点と、再断裂しなかった群(それぞれ8.0点、8.1点)に比べ有意に高かった。

  • ACL再断裂群は、12ヶ月時点のTegner活動度が中央値9と、再断裂しなかった群(中央値6)に比べ有意に高かった。

  • 筋力に関しては、非損傷側のハムストリング以外に両群間に有意差はみられなかった。

グラフ(本文より引用)
再断裂群はACL-RSIが高値であった


以上の結果から、ACL再断裂のリスクと、競技復帰への心理的準備性や膝関連自己効力感の高さに関連があることが示唆されました。

この研究から、ACL再建術後の競技復帰には、単に筋力や機能の回復を待つだけでなく、心理面にも注意を払う必要があることが示唆されます。
特に、リハビリの過程では、選手の「調子が良い」という言葉だけを頼りにせず、身体機能の評価をすることが大切だと思います。
競技復帰の時期を焦り過ぎないことが再断裂を防ぐ鍵になるかもしれません。今後、心理面も考慮したリハビリプログラムの必要性が叫ばれる可能性がありそうです。

今日もご覧頂きありがとうございました!

論文リンク
Greater Psychological Readiness to Return to Sport, as Well as Greater Present and Future Knee-Related Self-Efficacy, Can Increase the Risk for an Anterior Cruciate Ligament Re-Rupture: A Matched Cohort Study - PubMed (nih.gov)

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