見出し画像

2023/8/7 英語論文紹介

今日は、英語日記にするネタも少ない一日だったので、勉強した英語論文を紹介したいと思います。

タイトル
「Who Passes Return-to-Sport Tests, and Which Tests Are Most Strongly Associated With Return to Play After Anterior Cruciate Ligament Reconstruction?」

原著URL

内容

「Return-to-Sport Testsをクリアする患者と前十字靭帯再建手術後の復帰との関連:どのテストが最も競技復帰に強く関連しているか」という論文です。
私の研究のテーマとしたい、ACL再建術後の競技復帰指標は、様々なテストが提案されていますが、未だに重要とされるテストは特定されていません。

この研究では、
(1)手術後6か月に自己報告および機能的なテストのバッテリーに合格した患者の割合を決定すること
(2)合格した患者と合格しなかった患者との間で年齢、性別、および活動レベルの違いを調べること
(3)特定の種類のテストに合格した患者と12か月後の競技スポーツ復帰との関連性を調査すること。

結果を先に述べると
(1)手術後6か月において、450人の患者のうちわずか17人(3.8%)が全てのテストで合格。その一方で、95人(21%)の患者はいずれのテストも不合格。38%の患者が少なくとも3つのテストの合格基準を満たしました。

具体的なテストの結果を見ると、患者のうちIKDC尺度(症状と機能を評価する指標)の合格基準を満たした割合は26%、ACL-RSIスケール(心理的な競技復帰の準備度を評価する尺度)は32%、四頭筋の力の合格基準を満たした割合は26%でした。一方、ジャンプテストやホップテストの合格基準を満たした割合はそれぞれ50%以上でした。

(2)年齢に関しては、21歳以上の患者と21歳未満の患者とを比較した結果、年齢が21歳以上の患者の方が合格基準を一つも満たさないか1つしか満たさない割合が有意に高いことが示されました。
一方で、性別に関しては、男性と女性の患者との間で合格基準を満たした割合に有意な違いは見られませんでした。
また、前のケガをしたスポーツのレベルによる合格基準の違いも見られませんでした。

(3) ACL-RSI尺度(心理的準備度)やIKDC尺度(症状と機能)を合格した患者は、競技スポーツへの復帰のオッズが高かったと結論づけられました。
一方、シングルレッグホップテストやトリプルクロスホップテスト、四頭筋力のバランスなどの機能的なテストに合格した患者と、12か月後の競技スポーツへの復帰との間には関連性は見られませんでした。

本文より引用、IKDCとACL-RSIの6ヶ月の基準値を超えると、
それぞれ58%、61%が12ヶ月で競技復帰できている。

この結果から、患者の自己評価や心理的な準備度が、実際の競技スポーツ復帰に関する予測において重要な役割を果たしていることが示唆されています。一方で、従来の機能的なテストが競技スポーツ復帰の予測において十分な敏感さを持っていない可能性が示唆されています。

研究方法
この研究では術後6ヶ月に以下のテストと基準値を用い判定しています。
〇IKDC(主観的膝評価指標)・・・85点以上
〇ACL-RSI(心理的準備状態)・・・65点以上
〇大腿四頭筋筋力(等速性筋力60°/sec,180°/sec)・・・健患比90%以上
〇シングルレッグホップテスト・・・健患比90%以上
〇トリプルクロスホップテスト・・・健患比90%以上

競技復帰は
〇戻っていない
〇トレーニングに戻った
〇低いレベルの競技に戻った
〇同じレベルの競技に戻った

で12ヶ月時点で判定されました。

【以下、私見】
大規模な人数に競技復帰テストを行い、その結果を解析した研究で非常に参考になります。6ヶ月時点での筋力テストやホップテストは、IKDCやACL-RSIと比べて、12ヶ月の競技復帰と関連がなさそうというところが、やはりパフォーマンステストを従来のものと変えなければいけないと考えてしまします。
一方で、上には載せていませんが、基準五つすべてクリアした患者の競技復帰率は79%と高いことも示されており、複数の基準を参考にすることも重要です。
ただし、その場合、5つ基準をクリアできるものが3.8%と低く、他の研究でも同様に複数テストでは基準をクリア出来ないという課題をよく考える必要があります。

この分野の研究をもう少し進めることが今の自分の目標です。
以上、簡単ですが、論文紹介でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?