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乖離記録

確かに意識はあった。
その時にはあったが、起きた時には断片的にしか思い出せないこと。
それは無意識的行動なのかもしれないが、何か自分の中のものを整理しようとしている行動だったので、書き記す。

2/28 2:04

ちょっと休憩中 髪の毛切ってたらシャンシャン戸祭声が聞こえてきて自分は左前髪の輩からの声を汲んできってやったけも右前髪に寄るようにってマスターが言ってきてうざい
そしたら、からっとひっそりしてた 髪の毛が枝だから

2/28 2:07

マスターがきた
後はストリップの控え室でみんなめいくしてる風呂場ではクラブしてるわ
ごめん鏡借りてるしたでやるわ
まだ髪が乾かしてないしマスターの許可でなでられへんけど休憩してる
マスターが連れてきたしっとりとした妖精がきた 俯瞰でみてていってもらったから姫毛をつけてみた いいじゃん

このツイートは寝る前にされた可能性が高い。
ぼーっとしてきていたが、なんだか眠れなくこたつの中でウトウトと眠りの淵をさまよっていた。

風呂場にはパッキンがズレた蛇口から水がポタポタと垂れている。

加湿器のポタポタという音とリンクする。

春雨

ここはストリップ小屋とクラブの楽屋が一体になった場所らしい。

私は前髪を2~3日前から気にしていた。
短く、重くしたかったが、鋏が錆びており長らく切れていなかったのだ。
前髪は横に揃えるに限る。
それが私のポリシーであり、精神だった。

自分の出番を待つキャスト達が化粧をし、髪をコテでぱちぱちと巻く。
いそいそとした雰囲気。
吐きそうなほど甘い香水と整髪料の匂い。

隣で用意が終わった子たちがオススメのコスメの紹介をしている。
あの子は左手をテーピングで巻いている。
ここの看板娘であろう白髪の女の子は誰にも本性を見せないらしい。
陰口も耐えない楽屋。
ふわふわと衣装が舞う。
ここでしか舞えない女の子たちはこの6畳間の楽屋で天使になる。

姿見の前でサクサクと前髪を切る。

「ちょっとごめんねぇ」
「あ、はい、、、」

ももなと名付けられたキャストが姿見の上に立ち、マスカラをこれでもかと塗りたくる。
「ももなのまつ毛は~デジャビュなのだ!」

私は前髪を切る。

風呂場が何やら騒がしい。
次の出番のDJは有名らしいので人が並んでいたし始まったのであろう。もうこんな時間か。
地面に伝わる低音が心地いい。

前髪を切る。

マスターが来た。
多分、彼はこのストリップ劇場の支配人である。

彼に私は拾われたらしい。
たしか、新宿か池袋。
行き場のなかった私はネットカフェに入り浸っていた所、マスターが隣のブースからここの住所を書いたメモをひらりと私のブースに投げてから。
今ではストリップ劇場の掃除、衣装の作成や女子寮の炊事を任されている。
(洗濯とかも任されることおおいけど)

マスターは私に左はやんちゃだから右に合わせろと言付けて扉を閉めた。

たしかに、左は輩らしい。だが的確にアドバイスをくれる。
右は大人しい。
私的には左に合わせたいが、マスターが言うし右に合わせるか。

前髪を切る。

少し外に出てタバコに火をつけ休憩する。
マスターは私が休憩するのが嫌いらしい。
ひんやりした風が心地いい。夏が来る。
室外機のぬるい風に灰が飛ばされる。

戻ると、マスターがしっとりとした妖精を連れてきていた。
私の左は枝のようにカサカサになっている。
それを憂み、しっとりとした妖精は私の髪を撫で、右側は清少納言となった。

「俯瞰で見てご覧なさい」
そう言われ、少し姿見から離れ俯瞰で見る。

姫毛を足した方が良いと清少納言に言われたのでシャキンと切り、足してみる。

「いいじゃん」




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