3度目の「ぐりとぐら」
調味料、洗剤、診察券、カード類、書類のファイル
当初は、そんな身の回りのモノの識別ができれば十分、と思っていた
でも、点字が読めるようになってくると、指が「もっと読んでみたい」と欲する
文字を覚え始めた幼児のごとく、まずは簡単な絵本から…と
図書館で点字絵本「ぐりとぐら」を借りてきた
初めて触る点字絵本は
イラストが立体的に点の凸凹で表現されていて、表紙の題字の周りもオリジナルで模様が施されていてなんだかお洒落
これはしっぽかな。じゃあこれをたどればぐりとぐらだな。
触りながら想像するのも素敵な時間
初めは1行読んでぐったりしていたけれど、少しずつ慣れてきてゆっくりではあるが進むようになってきた
そして
最初のページを触っていると、すぐに10年前にタイムスリップした
娘が小さい頃、何回も読んであげたおかげで当時ほぼ暗記されていたフレーズが懐かしく蘇る
僕らが1番好きなのは
お料理すること食べること
ぐりぐら ぐりぐら
思えば私自身が子供の時何回も「ぐりとぐら」を、読んでいた
あまりになじみすぎて意識しないほどに、好きと言わなくても好きな絵本
子供の頃、スキー場のある高原に住んでいて、家の裏は「ぐりとぐらのおきゃくさま」に出てくるような雪の森が広がっていた
ぐりとぐらのベッドルームやバスルームの暖かそうでちょっと外国風のおしゃれなしつらえや、色違いでお揃いのコーディネートに憧れた
今もほっこりと暖かくてどこか異国風なものが好きなのは、この頃読んでいた絵本が原点なのかもしれない
娘に絵本を引っ張り出してきてもらい、点字がどうしても読めない箇所を答え合わせしてもらったりしていたら
娘もいつの間にか一緒になってカステラが美味しそうだとか、クリスマスケーキの上のサンタの飾りに憧れたとか、小さな頃に戻っていた
10年前、必要とする時期には絵本を読んであげることができていたんだ、と今は奇跡のように思える
そして3度目に、まさか自分のために「ぐりとぐら」を読む日が来るなんて
1粒で3度おいしい
こんな楽しみ方をできる人はそう多くはない
悲しいことのようで
得した気分でもある
先の事はわからないけれど
もしかしたら4度目、小さな子供に指先マジックを披露して、ばあちゃんかっけー!と目を丸くされる日が来ないとも限らない
過度に期待はせず、
でも技術は磨いておこう
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