マナーハウスの「魔法使いの塔」に泊まる(フィンランド)
もれなく家事がついてくるコテージ滞在の後、マナーハウスに一泊しました。旅の仕上げに、ご褒美のような時間を満喫しました。
ムスティオ・マナー(Mustio Manor:スウェーデン語ではスヴァルト・マナー Svartå Manor)は、ヘルシンキの西約80kmに位置する、歴史のあるマナーハウスです。ムスティオ(=スヴァルト)は黒い川の意味。この地域で鉄鉱石が発見され、スウェーデンのグスタフ王が製鉄所を作ったのが始まりです。
フィンランドの数少ないマナーハウスは、長く続いたスウェーデンやロシアの統治下で作られました。旅行していると、西へ行くほどスウェーデン、東へ行くほどロシアのような雰囲気になるのを肌で感じます。フィンランドの公用語は、フィンランド語とスウェーデン語です。スウェーデン語人口は全体の5~6%ですが、知識階級≒支配層にあたります。 ムーミンはスウェーデン語で書かれましたし、作曲家のシベリウスはフィンランド語が苦手だったと言われています。
18世紀半ばに所有権がスウェーデン王家からLinder家に移りました。メインビルディング(1783-1792)はロココ - 新古典様式で、フィンランドで初めて二重窓を取りいれたそうです。現在は博物館になっています。
眠れる森の神ファウヌス。
博物館のお隣の真っ白なホテルEdelfeltには、11の客室があります。建築家Carl Albert Edelfelt(1818-1869)に因んで名づけられました。カールはあの画家のAlbert Edefeltのお父さんです。
鉄鉱石のモニュメント。「1560年、この場所にグスタフ・ヴァーサ王がスヴァルタ製鉄所を設立し、フィンランド最古の産業の中心地だった」と書かれています。25kmほど離れたところには、ハサミやアーティストビレッジで有名なフィスカース村があります。
ここが私たちの泊ったマーリン・タワー。 小さな水路を渡る橋のすぐ近くに建っています。 あの魔法使いのマーリンからとった名前だそうです。 フィンランドではなく英語圏の魔法使いなのは、ちょっと不思議。
中はこじんまりしたワンルーム。
謎めいた名前の割には白が基調のロマンチックな雰囲気で、お城の秘密の離れのようでした。王妃が庭番と密会するのにぴったり? マーリンが手引きしてくれるのかな(笑)
寝室と洗面は2階です。
ベッドはカントリー調
古材を活用したヘッドボード。何かの扉だったのでしょうか。
ベッドにごろんと横になって天井を見上げると、謎の丸い穴が。何とここは元々、変電施設だったそうです。 あらら、マナーハウスの住人の部屋じゃなくて、機械室に泊まっていたとは!
湖に面した小さいテラス付き
てくてく歩いて、夕食を食べに行きました。広い・・・
蔦に覆われたレンガ作りの建物は、手前がホテルのレセプション、奥がレストランになっています。 かつては馬車小屋だったそうです。
Svartå Slottskrogは、ヘルシンキからもわざわざ食べに来るほど定評のあるレストランで、カントリーレストランの第1位に選ばれたこともあるそうです。
今や当たり前といっても良い地産地消&オーガニックなお料理は、どれも素晴らしかったです。
メインはたしかヘラジカだったと思います。柔らかくてソースもよく合っていました。コテージ滞在中はずっと粗食だったので、久々のコース料理を堪能しました。凝り過ぎず、重すぎないのもシニアな私には嬉しい。
運ばれてきた途端、思わず笑顔になったマッシュルーム形のデザート。ベリーも添えてこれぞフィンランド。ご馳走様でした♪
食事が終わってもまだ明るく、散策しながら帰りました。
カンファレンスルームは結婚式にもよく使われるとのこと。
カンファレンスルームのテラスから続く小道沿いに、サウナ小屋がありました。食べて踊ってサウナに入って、つきないおしゃべり・・王道ですね。 昔ながらの素朴な小屋が、返ってくつろいだ気分にさせてくれます。
サウナ小屋の内部
もちろん、湖にもドボン!
緑がまぶしい広大な庭園
まるでイギリスやフランスの庭園のようでした。
湖の散策路
歩き回っていると、姫になった気がしてくる・・・(な訳ない)
あずまや
この古い建物はなに?
何とスタイリッシュな会議室でした。内と外のギャップに萌えます。
こちらはShingle Houseという宿泊施設。 かつての労働者の住まいで、フィンランドの伝統的な板ぶき屋根(Shingle)に因んで名付けられました。色々な宿泊タイプが選べるのは嬉しい。
しんと静まり返ったダム
小道を挟んだお隣に教会が建っていました。
馬車は教会行事の際の移動用でしょうか。ガラス張りのなかに飾ってあると、なんだか神社のお神輿みたい。
中には入れませんでしたが、美しく整えられていました。
SOLDAT(兵士)と刻まれた墓石。まわりの花の色合いが、ブルーと白のフィンランド国旗を連想させます。
リンダー家が最も栄えたのは20世紀初頭で、当主のHjalmarは莫大な土地と財産、フィンランドで初めての自動車も所持していた大富豪でした。しかし1940年、離婚により200年続いたマナーハウスを手放したそうです。お金持ちも色々大変ですね。 その後Magnusが子孫のために買い戻し(1985年)、放置されていたマナーハウスを40年間にわたり整備しなおしたそうです。現在はChristine & Fillip Linder夫妻が管理しています。White Ladyの幽霊も出るとかでないとか。
私達が泊まったときも、いくつかのセミナーや会議が行われていました。駆け足で訪ねることも出来ますが、せっかくなら一泊して雰囲気をじっくり味わいたいマナーハウスです。
<公式サイト>