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トカトントン

「死んでも、ひとのおもちゃになるな!」

朝から太宰治のパンチをくらう。

正確に言えば泉鏡花のものらしい。


製本を始めてからめっきり視力が落ちた。
歳のせいもあるのだけれど。

でも実際の製本の仕事では、二つの眼球を使うというより、
第三の目を使うことの方が多い。


「第三の目」

ちょうど、おでこの、前頭葉の部分。
そこを集中させて、本全体を見ているように思う。

第三の目に意識を集中させると、耳からの情報もはいりやすい。

「いい音、出てるな」

は、製本をしていて大切な感覚。

でも幸いにも、太宰のあの「トカトントン」はまだ聞こえてこない。


そして、指先の感覚。

これも「第三の目」の一部。

私は、目の見えないマッサージ師になって、本を診る。


全てが、私の身体を通して行われること。


ここに歌が加われば、なお最高!



今日はバレンタインデー。

アトリエの隣の花屋は朝から男性客で賑やかだ。

若い男子グループがそわそわしながら花束を選んでいるのが
なんだか微笑ましい。

初めての、女の子への花束なんだろうか。。。