フィッツの法則 | ATQの「知っておこう」vol.1
ATQデザイナーのクリモトです。
先日のWWDC2023で発表されたVision Pro、皆さんはどのような感想をもちましたか?
Apple信者のクリモトは当然リアタイで観てたのですが、まさにiPhoneショックの再来という感じで、2-3日興奮で眠れないほどでした。
Vision Proはコントローラーを使わず「指で操作できる」という新しいユーザー体験がひとつの売りですが、これまでAppleの作ってきた体験を顧みると、きっとすごいものに仕上がっているだろうと期待せざるをえません。
今回はそんなAppleのユーザー体験を支える末端の末端。UIの基礎である「フィッツの法則」についてAppleの事例を基に一緒に復習できればと思います。
フィッツの法則とは
フィッツの法則は、1950年代に心理学者のパウル・フィッツによって初めて提唱されたもので「ターゲットのサイズ」と「ターゲットまでの距離」と「ターゲットの選択しづらさ」との相関関係を説明するものです。
細かい公式は以下のようになっているのですが、
要するにT(時間)は$${ \log 2(1+ \frac{D}{W}) }$$ (サイズや距離)に比例するので「ターゲットが遠くて小さいほど、到達するのに時間がかかる」とわかる。
すなわち「ターゲットはなるべくデカくて近いほうがいい」ということを表しています。
例えば、テレビのリモコンであれば頻繁に使うボタン(音量調整やチャンネル変更など)は大きくて中心にあり、リモコンを握る手の最も近くに大きいスイッチ(ターゲット)があることで快適なユーザー体験を作り出しているというようなことです。
フィッツの法則と「誤差」
また、フィッツの法則を意識することで、ヒューマンエラーによる誤差を軽減できることも知られています。
例えば人がマウスポインタを動かす時、厳密にターゲットの場所を狙い撃ちすることは出来ず、必ず少しの誤差が生じてしまいます。
当然ですが、ターゲットまでの距離を短く、ターゲットのサイズを大きくすることで誤差を生じさせる機会を減少させ、誤差を許容することにつながるのです。
その例としてよく登場するのがメニューバーの話題です。
Macのメニューバーは最上部に固定されており、これは一見すると画面上の最も遠い位置にみえると思います。
しかし実際は、画面の範囲に制限があり、いきすぎた分は補正されます。
その為、フィッツの法則でいうところの「ターゲットのサイズ」は実質無限となり、ヒューマンエラーを起こしづらい設計になっているといえるのです。
Appleによるフィッツの法則の応用
Appleの話に戻りますが、AppleはUIデザインとしてフィッツの法則を意識することは勿論、内部システムでも側でも工夫を凝らしていることが知られています。
先ほどのメニューバーを例に話すと、メニューバーのリニアメニューは普通、項目の判定のトンネルをたどりながらターゲットに向かう必要がありますが、Macのメニューバーはそうではありません。
Macでは常にマウスカーソルが画面内のどこにあるのかを監視しており、ユーザーの目指すターゲットを予測し、見た目はそのまま、該当箇所への判定を出すようになっています。
その為、リニアメニューではサブメニューが開いた時に以下のような判定を一時的に追加しているため、ターゲットまでの距離が短い、自然なルートを通ってたどることができるのです。
終わりに
フィッツの法則を初めとするUIの基礎をデザインから内部システムまでとことん解き詰めているからこそ、Appleのユーザー体験が生まれ、評価されているのは確かです。
来年2024年発売のVision Proは私たちにどのような体験を提供してくれるのでしょうか。
いつか手に入れた暁には、その詳細を報告できればと思います!
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