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刃物研ぎ機を天然石研磨用にカスタマイズしたい人が読む記事【その①】最低限のカスタマイズ

こんにちは。
Atelier IshtariaのUraと申します。

入手した原石を自らカボション研磨し「普段づかいのファンタジーアクセサリー」をコンセプトに、マクラメアクセサリーなどを制作しています。

紹介している研磨機とアイテムで研磨したルースや、原石/スライス板などの研磨用素材も販売していますので、この記事を読んで天然石の研磨に興味を持った方は、ぜひショップに足をお運びいただければ幸いです。


1.はじめに

こちらの記事は

・これから石磨きに挑戦してみたい!
・手研磨の次は、機械研磨に挑戦してみたい!
・手研磨では難しいモース硬度の高い石に挑戦してみたい!

という方に向けた記事となります。

具体的な研磨方法ではなく、特定の刃物研ぎ機を天然石研磨向けにカスタマイズする方法を記載しています。

機械研磨に興味はあるけど、専用の宝石研磨機はデカいし高額だし手が出せない⋯代わりに刃物研ぎ機ってどうなの?
私もそのうちのひとりでしたが、とある刃物研ぎ機のレビューに目が釘付けになりました。

出典:Amazon

えっ!できるの? 目からウロコでした。

こちらのレビューをもとに、詳細な情報がない中探し求めてき刃物研ぎ機用の研磨用品。
2017年に本体を購入し、数年さまよい歩いてようやくたどり着いた研磨用品や、入門的な最低限のカスタマイズ方法を書き綴っています。

刃物研ぎ機で天然石の研磨ができるのか、どんな研磨用品を買えばいいのか悩んでいる方のお力になれれば幸いです。

ちなみにファセットカットには対応していません。カボションカットや平面の研磨のみ対応していますので、悪しからずご了承くださいませ。

商品紹介にはAmazonアソシエイトを含みます。
Amazon以外の商品紹介は、PR案件でもなんでもなくただの商品紹介です(泣)
気になる商品がありましたらポチっていただけますと助かります。

続きの記事はこちら!




2.注意事項

紹介する使用方法は、刃物研ぎ機のメーカー推奨使用方法ではありません。故障の際はほぼ確実に保証対象外となり、修理できない可能性があります。

当記事の内容に関することで、くれぐれもメーカー様へ問い合わせなどすることのないようお願いいたします。

また、本体の仕様変更により、紹介しているアイテムが使用できなくなることもございますので、予めご了承願います。

当記事を参考にしたことによる怪我や損害に関しては一切保証いたしかねます。
記事の内容はすべて自己責任でお試しいただきますようお願いいたします。


3.カスタマイズする刃物研ぎ機

使用する刃物研ぎ機は新興製作所さんの「ホームスカッター STD-180E」

こちらの機種をカスタマイズしていきます。
多少のガタつきやブレがありますが、研磨は十分可能です。

「ホームスカッター STD-180E」以外の刃物研ぎ機のカスタマイズには対応していませんのでご注意ください。

なお、こちらの機種で研磨する時は必ず「右回転」で使用してください。
左回転で使用すると研磨板固定用のナットが徐々に緩んできて大変危険です。慣れないうちはスイッチを目視で確認してからONにするようにしましょう。


刃物研ぎ機での天然石研磨といえば、個人的にマキタさんの研磨機というイメージ。こちらをカスタマイズして研磨体験を行っているお店をよく見かけますが、入門用としてはちょっとお値段が…
非公式でパーツなどを販売しているショップもありますが、カスタマイズパーツのためか非常にお高いです。


私がSTD-180Eを選んだのは、入手のしやすさと何よりコスパが良いこと。
万が一壊れてしまった場合でも、新品の購入に手を出しやすい価格なのが◎。

長時間研磨をする場合は2台持ちをして、交互に使用することで機械のクールダウンも可能です。

20分以上連続で使用することは推奨されていませんが、ルーペチェックなどの間にこまめにスイッチを切れば、一度に大量の研磨をしない限り20分以上連続で研磨することはほとんどないと思います。

私は現在1台稼働、もう1台は新品を予備で所持。
購入から数年経ちますが、スイッチの具合が悪くなったくらいで問題なく使用できています。
スイッチはパーツを取り寄せて、ネジと裏蓋をはずして自力で交換できました。

(左)交換前/(右)交換後
微妙にサイズが違いますが、問題なく使用できています。

【[マルツオンライン] ロッカースイッチON-OFF-ON】
https://www.marutsu.co.jp/pc/i/240390/


4.本体以外に必要なアイテム

購入済みの方は付属の説明書または本体を、購入を検討中の方は新興製作所のサイトに取扱説明書がありますので、説明書を片手に読み進めてみてください。

本体付属品

・砥石 → 使用しません
砥石固定ネジ→ そのまま使用でもOK
水槽 → そのまま使用でもOK
水滴防止クッション → そのまま使用
刃物ガイド → 取り外します
スパナ → ナットの取り外しに使用できます
排水ホース → そのまま使用でもOK

追加購入が必要なもの

・ダイヤモンド研磨板
・ナット
(M10/左ネジ/ピッチ 1.5)(※)
・ワッシャー(※)
・ゴム板(もしくはゴムワッシャー)(※)
・スパナ(付属品ではない市販のもの)(※)

(※)付属の「砥石固定ネジ」を使用するなら不要


《ダイヤモンド研磨板》

付属の砥石の代わりに装着します。成形、荒研磨~中研磨で使用。
天然石の研磨をするなら必須のアイテムです。

【サイズ】
外径:6インチ(150mm)/穴径:1/2インチ(12.7mm)

【使用している番手】
80/150 /320/600/800/1200
お好みで 1500/3000 を導入してください。

私は香港から取り寄せています。
THK DIAMOND TOOLS(PayPal利用可能)
※リンク先は香港のサイトです。

同メーカーのものは国内でも購入可能です。

別メーカー製はAmazonなどでも購入可能。

研磨板に限らず研磨用品の番手は、メーカーごとの仕様が微妙に異なるようですので、種類ごとに同じメーカーのもので揃えることを推奨します。


《ナット/ワッシャー/ゴム板/スパナ》

ゴムワッシャーは自分でカットしたものを使用。

ナットのサイズは「M10」。
左ネジ(逆ネジ)並目、ねじのピッチは「1.5」です。

ナットは付属の砥石固定ネジの代わりにダイヤモンド研磨板を固定するのに使用します。付属の砥石固定ネジそのまま使用することもできますが、研磨できる範囲が狭まります。

(左)付属品使用/(右)ナット類使用

研磨範囲を広くして研磨板を効率よく使うために使用しますが、ダイヤモンド研磨板を付属の砥石固定ネジで固定すると取り外しができなくなって焦ることが何度もあったので、ナットを使用することをおすすめします。

ワッシャーはM10以上対応のもので、なるべく外径が大きなものがベスト。
内径の大きさが、ナットの外径より小さいものを選択してください。

ゴムワッシャーは既製品もありますが、ゴム板をワッシャーより少し大きめに自分でカットしたほうがコスパもいいと思います。
いずれもホームセンターやAmazonで購入可能です。

付属品のスパナは、上図のように半円部分がちょうどM10ナットに引っかかるので回すことができます。
付属のものが使いづらい場合は、市販のスパナを別途購入してください。


あると研磨が捗るもの

・バフ(フェルトまたは羊毛)
・アクリル円板
・ダイヤモンドペースト

酸化セリウム
ドップ棒/ドップワックス

この項目は「手摺りとダイヤモンド研磨板だけで天然石研磨を極めてみせる!」という方には不要です。

実際ダイヤモンド研磨板だけで研磨していると言うプロの方もいらっしゃいます。しかし相手は何年も研鑽を積んだ玄人の職人⋯。
素人がそれを鵜呑みにして挑戦すると、全く変わらない研磨結果に絶望して楽しくなくなり、しばらく石磨きから距離を取りたくなります。素直にペーストなど他の研磨用品を使いましょう⋯(経験談)

結果が見えてこないとモチベも上がりません。
楽しく研磨するのがいちばんです!


《バフ》

バフは使用するペーストの種類・番手分を用意。
上から別の番手を塗り足したり混ぜたりしないように注意です。
保管も研磨剤の塗布面同士が重ならないように気を使います。番手ごとにジップロックに入れて保管すると、ホコリなどがつかないので便利です。

サイズは研磨板と同じく150mm程度。厚みがあるとナットで固定できないので3~5mm厚のものを推奨します。
本体側の固定ネジ部分の長さが10mm程しかありませんので、バフの下に何か敷いたりすると5mmでもギリギリです。

Amazonなどでも両頭グラインダー用でサイズ150mm、穴のサイズもちょうどいい感じのバフが販売されていますが、厚さが10mm以上あり、この研磨機では固定できないので注意。

バフはアリエクでかなりお安く購入したこともあるので、コストを抑えたい方は探してみてください。


《アクリル円板》

穴のあいたものが必要です。
穴あけサービスを行っているショップもあります。
小数点以下を指定できない場合は「13mm」であけてもらえば問題ありません。

研磨板の下敷きにして底上げをする用途、バフなどのやわらか素材の研磨用品の下敷きなどに使用します。
厚さは1~2mm程度。バフの下敷きに使用するなら、アクリル板の厚みにも注意が必要です。

木板も検討しましたが、水を使うので却下。
歪みや腐敗の心配がないアクリル板を選択しました。


《ダイヤモンドペースト》

最終仕上げ用の研磨剤です。バフに塗布して使用します。水は使用しません。
こちらはダイヤモンド研磨板と同じメーカーのものを使用。
種類はオイルベースの「7/2.5/1/0.25μm」の4種。

同じものは国内でも購入可能です。


国内メーカーのダイヤモンドペーストはAmazonやモノタロウなどで。


《酸化セリウム》

こちらも最終仕上げに使用します。
使い方はダイヤモンドペーストとほぼ一緒ですが、水で溶いてバフに塗りたくります。
水を使用しますが、流水での研磨はしません。
乾かないようにバフにスプレーなどで霧吹きをして、常に湿らせた状態で使用します。

使用しているのは、2.45μmと0.9μm。
ガラス研磨に特化した化学研磨剤で、水晶などケイ素を含む天然石の研磨に威力を発揮。多少の小傷なら、これで磨けばくもりも傷も消えてなくなりうるツヤに仕上がります。
ただしケイ素を含まない天然石にはほとんど効果がありません。

酸化セリウムを選ぶ時は、ミクロン数や番手の記載がある「研磨用」のものを。
※番手やミクロン記載があるものをおすすめします。

おすすめは国内メーカーのアウトランさん。
購入はアウトランさんの公式サイト、Amazonでも購入可能です。
こちらの酸化セリウムのおかげで、数年の悩みのうちのひとつが解決しました。

ダイヤモンドペーストと酸化セリウムの研磨サンプル(ブルーカルセドニー)
【酸化セリウム 0.9μm→ダイヤモンドペースト 0.25μm】

《ドップ(ドッピング)ワックス》

ドップワックスは、石とドップ棒を固定するための接着剤の一種。
ドップ棒と呼ばれる木の棒などに、炙って柔らかくなったドップワックスを棒の先端に塗りつけ、その塗りつけたワックスに天然石を貼り付けて固定します。

研磨後は冷凍庫に入れて冷やしたり、ワックスを炙って温めながらピンセットなどで剥がしてあげると石をきれいに取り外すことができます。
繰り返しの利用が可能です。

繰り返し使っているとカッチカチになって接着力が弱まってきますので、「シェラック」というワックスを加熱しながらを混ぜてあげると粘着力と接着力が回復します。


《ドップ棒》

ドップ棒は、研磨したい天然石にくっつけて「持ち手」にすることで、研磨しやすいようにするアイテムです。

素材はなんでも良いので、木の丸棒などをホームセンターで使いやすいサイズにカットしてもらうか、ノコギリで自分でカット。
太さは研磨したい石のサイズにあわせて選んでください。細いものは小さなルースも研磨できるので便利です。

最近ではドップ棒にワックスがついている状態で販売しているショップも見かけますので、少量必要であればそちらを購入してみるのもいいかもしれません。

ドップ棒とドップワックスは、爪や指が削れたり指の関節を痛めたくない人におすすめです(私は素手で磨いていてばね指になりました)
いずれも手で持って研磨したい方には不要です。


なお、石の固定には石とワックスをあたためる熱源が必要になります。
最低でもライター。ドップワックスを溶かす専用のポットもありますが、メルトチップ用の「メルトポット」でも代用可能です。

私はドップ棒に付けたワックスを溶かすのにアルコールランプ、ドップワックス用に購入したメルトポットは結局その用途では使用せず、石を温めるのに使用しています。

石の温めすぎには注意。
火の取り扱いと火傷には特に気をつけてください。

5.おおまかな研磨手順

①切断機でルースにしたい大きさ程度に原石をカット
②テンプレートであたりを書く
③《ダイヤモンド研磨板》80~150番 成形
④《ダイヤモンド研磨板》320~1200番 成形しながら研磨
⑤※※シークレット※※
⑥※※シークレット※※
⑦《ダイヤモンドペースト》7~0.25μm 仕上げ
水晶などの場合は
《酸化セリウム》2.45→0.9μmで仕上げ

研磨中のルーペチェックは必須です。
チェック用にデスクライトなどの光源も必須となります。
研磨痕が均一でない場合は、一つ前の番手に戻って再研磨を。

シークレットの「⑤/⑥」は別記事にて紹介中のアイテムを使用しています。興味のある方はぜひご覧ください。


6.おわりに

刃物研ぎ機で天然石の研磨は可能です。
プロ用の機材を揃えなくても十分に楽しめます。

より良い方法があるかもしれませんが、今のところ私が満足している方法や道具を紹介させていただきました。

天然石の磨き方や道具の使いやすさは人によって様々です。紹介したツールや方法を絶対に使わなければならないということはありません。
あくまでも情報の一部として参考にしていただければと思います。

今回は最低限のカスタマイズ方法を紹介しましたが、別記事ではさらにとっておきの研磨用品や水まわりのカスタマイズ方法を紹介しています。
興味のある方はぜひご覧いただけますと幸いです。

それでは、良き石磨きライフを。

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