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地球は青かった。松濤の家賃は高かった…。高級住宅地松濤に出現せし『杉本博司・本歌取り、東下り』展。
渋谷と神泉の間に松濤というエリアがあります。
すごい高級住宅地です。
成城とか広尾とか代々木上原みたいな『上質を知る人』がいっぱい住んでそうな雰囲気の場所です。
友達と駐車場に停まっている外車の車種ランキングを競ってみようと話しながら歩いてみたらほぼポルシェ、フェラーリ、ベンツ、BMW、他、貧乏人には縁がなさ過ぎて読み方さえよくわからない高級車ばかりでした。ここら一帯は不動産屋の審査で収入や職業に加えて車種も上記のもの以外だと家を借りるor建てるのは禁止されているのではないかと思うほどでした
ガヤガヤしてなくて品があってなんか空気もキレイ(自己感覚値)。
そんな松濤には『松濤美術館』というこれまたおしゃれなフランス料理のレストランの大きいお皿にちょこんと盛られたテリーヌみたいに品のいい美術館があります。
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上の写真が松濤美術館なんですが、先日この松濤美術館を訪れてきました。
松濤美術館は初めて行く場所で、地図を見ると割と住宅地の中にひっそりとあるような感じだったのですが…最初、松濤にはこのような建物がいっぱいありすぎてどれが美術館なのかわかりませんでした(笑)
そして外観の写真を撮ろうとしていたら、目の前をババーンと黒塗りの高級車で美術館に乗り付ける松濤貴婦人が出現したりしました。(運転手付き)
こういうエリアの人に会うとよく思うのですが、こういう場所にはその街独自のマイルールみたいなものがあるように感じたりします。例えば、なんでこの界隈の人たちは夜なのにサングラスをしてるんだろう…?とか(笑)
他にも自由が丘などに行くとおしゃれな人たちがたくさんいるのですが『それはちょっとジーンズ、ロールアップしすぎじゃないですか…!???』みたいな、ハイエンドというかズボンの巻き上げ方がハイ過ぎる人とかを見かけたりします。
そんな渋谷区の松濤美術館では現在杉本博司という写真家の展覧会が行なわれています。
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東下りというのは元々関西(姫路)で行なわれていた展覧会を東(東京)に持ってきて再編した展覧会なので『東下り』なんだそうです。決して『天下り』ではございません。エリア的にそういう人いっぱいいそうでしたが。
杉本博司は海を長時間露光で撮影した海景というシリーズなどが有名です。
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あとジオラマとか。
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本とかDVDもたくさん出してます。
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松濤美術館という建物は白井晟一という建築家が建てた円筒形の建物です。
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ちょっとこの建物を見てるとボルヘスを思い出します。
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そしてこの美術館の特徴としてはいわゆるホワイトキューブ(白い箱形の建物)のような美術館の展示のしかたではなく、円筒形の回廊に沿って作品が展示されているということです。
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ちなみにホワイトキューブというのはニューヨークのMOMAが世界で初めて作り出したものですが、そういったいわゆる美術館的な美術館ではないところが新鮮で感覚としてはバベルの塔で作品を見ているような感じでした。
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葛飾北斎が東国の旅中に現れる富士山を描いたと言われるかの有名な『富嶽三十六景』これを本歌として写真で色んな角度から撮った富士山を合成し、さらに余計なビルや家の灯りなどをレタッチして現代の富嶽三十六景に見立てた写真が上のものだそうです。
今や街のビルからお顔のシミまでなんでも簡単に消去できる時代です。
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杉本博司は元々写真家であり、28歳の時に初めて先ほど出てきたニューヨークMOMAに作品を買い取られたことからキャリアがスタートします。
その時に買い取られたのがジオラマです。
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一応カテゴリーとしては写真家ですが、いわゆる写真を撮るというよりは建築の設計から能の舞台、骨董の収集(ニューヨークでずっと骨董屋も営んでいたそうです)、著作なども多数あり、写真は表現方法の一つである哲学者に近い感じの人という感じです。
ちなみに箱根ではこんな作品を展示していました。
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他に今回の展覧会では暗闇のなにも見えない中で現象液を使って印画紙に習字を模して描いた『書』などもありました。
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闇鍋みてぇだな…と思いました。
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ビスケット?みたいですが、シュメール期の文字が書かれた石板らしいです。
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え?なにこの変態メガネ!?増税メガネの仲間!???
ちょっと夜の松濤の人みたいなよくわからない出立ち…というか変態にしか見えないんですけど、、。
実はマルセルデュシャンのオマージュ(本歌取り)なのだそうです。
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このように本展覧会では本歌とそれを受けた現代の杉本さんの作品との対比がかなりの数で構成されています。
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上のすごい複雑な数式を形にするとこうなるらしいです。↓
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最初、松濤のおしゃれな家にある『ピザ切りカッター』かと思いました。
と、写真や骨董、書から立体と色々ありますが作品の数もそんなに多くなく、すごく品の良い、居心地の良い美術館でした。
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最後の方は能のお面とか蝋燭の写真とかがあって人生の終末を感じさせられるような構成でした。
ちなみに現代トップクラスの作家であるゲルハルト・リヒターもダミアンハーストも村上隆もそうですがみんな共通して生と死を感じさせるような作品(骸骨とか蝋燭とか)を作っています。
西洋ではこれらのテーマが歴史的にずっと取り上げてきたことであり、世界で活躍する(西欧ベースの共通言語に適応させる)にはこういった概念が欠かせないらしいです。
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*上記の作品は展覧会には出品されているものではありません。
全てのフロアを見て最後は螺旋階段を下って出口に向かうのですが、なんでしょう、展示の構成もあり本当人生の回廊を下って行くような感じでした。
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外に出て、ああ空が青いな、こういうとこ住んでみてぇな…が最後に思ったことでした。
そして帰りに松濤の不動産屋の外看板を軽い気持ちで覗いて見たら、家賃はもはや天文学的な数字になっていました。これは地球から宇宙までの距離を表しているのか?と思うくらいゼロがいっぱいでした。
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宇宙から地球を見た宇宙飛行士の感想
↓
『地球は青かった…』
庶民が地上から松濤の家賃を見た時の感想
↓
『松濤は高かった…』
共通しているのはどちらも言葉を失ったっていうことでしょうか。そして宇宙飛行士が宇宙から見た地球以上に私の顔は青かったと思います。
ホント、隕石が直撃したような衝撃を受けましたので(笑)こういう時こそこの眼鏡をかけたいなと思いました。
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そして松濤を後にする直前、美術館の出口付近に松濤美術館主催の公募展チラシがあり、こちらもどれどれと見てみたら…
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応募資格が…
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応募資格→渋谷区在
打ち上げパーティーとかやったら、絶対『割り勘』なんて許されなさそうですね。
そして、
『あなたのアートと出逢いたい』
とありますが、まずは渋谷区に住ませてくれるパトロンに出逢いたいよ!!(笑)
そう思う次第でした。
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