見出し画像

4Bの鉛筆だけで描いてみる/おとなの基礎デッサン②「紙コップその1」

直線の練習を終えると、鉛筆デッサンのメニューは実際のモチーフを観察して描く課題へと本格的に移行していきます。カリキュラムは基本的な立体をしっかりと描く力が備わる様に、立体の形状ごとで大まかに区切りがあり、そのひとつ目は「円柱」となっています。

記念すべき最初のモチーフは紙コップです。ここでのポイントは、左右対称や楕円形を視点の高さを意識して描くことや、それらを踏まえ紙コップらしい白さやバランス、デザインされた美しさを知ること、さらに曲面に合わせた陰の描き方などとなります。それらをおさえながら、まずはモチーフを観察して描くことに慣れるのです。
線の練習同様、自らの気づきを大切に行っていく訳ですが、その為に当課題では特筆すべき「制作に関わる特徴とねらい」があります。

それは「鉛筆は4Bの一本のみを使用して描く」というものです。

鉛筆には種類があり、それぞれ硬さや色の濃さが異なります。それらの使い分けがデッサン
において重要であることは語るまでもないですが、一方で初めから鉛筆の使い分けを意識し過ぎてしまうと、上達のネックとなりかねません。
まずは目標である、丁寧にモチーフと向き合うこと、そして観察の方法を自分で探っていくことに集中し「観察して描くことを定着させる」ことができるよう、現段階で不必要なものは思い切って省いていくのです。
その為、鉛筆の中でもかなり色が濃く軟らかい4B一本だけを使用し、筆致をしっかりと残しながら、観察と描写の軌跡を分かりやすくします。

一方「4B一本のみ」では、どうしてもままならない表現があります。それは色の表現、紙コップでいうと「白さ」を出しづらいということです。
その濃さ故、普通に陰影を描いたとしても黒めの紙コップが完成します。
しかし、この紙コップ①の課題ではそれで良いのです。
何故なら「あれ、なんだか白い紙コップらしくならないぞ?何が足りないのかな?」という疑問を自ら抱き、新たな方法の必要性を感じてもらうことがとても大切なのですから。あくまで作者が必要に感じる、という姿勢があって、そこで初めて前述した「鉛筆の種類」に目を向け、次の課題である「グラデーション」へと移行していく訳です。

ですのでここでは、しっかりと観察をした証=筆致が残っている状態の「黒い紙コップ」で構わないのです。寧ろ黒い紙コップを描くことが、上達へと繋がっていくのです。✍️

Text = 本田雄揮(アトリエ5)
Edit = Tatsuhiko Watanabe(遊と暇)

Website http://atelier-5.com/class/adult

この記事が参加している募集

オープン学級通信