【掌編】 トイレの男

ファミレスに居た。
ふとトイレへと席を立つ。店の隅にある男性用トイレのピクトグラムは経年のためか、頭部にあたる円がはがれ落ちている。
ノブに手をかけようとして、使用中だと気付いた。
しばらくすると、紙をたぐるカラカラという音がして、水が流れた。鍵が赤から青になりドアが開く。
「失礼」
そう云って出てきた男には首が無かった。
「ここ首無し専用ですよ」
あるはずのない男の顔は笑っているように見えた。

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