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浅倉透コミュ通読 基礎編

シャニマスに本腰を入れて間もないというのに寝ても覚めても浅倉透という女の子のことが頭から離れない。

長くなったので共通コミュを対象とした基礎編と先日実装されたPssrコミュを対象とした応用編に分けました。引くほど長い。

共通コミュプロローグ「あって思った」

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 もしも勝手知ったるバス停にて、不幸にもタッチの差で乗り過ごした男を見かけたとする。そのバス停はバスとバスの間隔が40分近くあり、なんなら歩いた方が早いことだって往々にしてあるということを自分は知っていたとする。
気を落とした様子で次のバスをベンチに座って待とうとする男に対して「歩いた方が早いよ」と一声をかけるか、かけないか。
かけない理由を考えてみる。
 当然の話だが歩いた場合と待った場合との時間差が目的地によって異なる。差が20分なら歩くが10分程度ならバスを待つなんて人もザラにいる筈だ。
もし男の目的地が自分の予想している場所と違うならば、いきなり他人がいらないおせっかいを焼いたことになる。
そうでなくとも、その男が見ず知らずの人間から声をかけられると(内容の何如に関わらず)不快に思うタイプの人間であるかもしれない。
歩き出さない理由、自分が声をかけない理由なんていくらでも思いつく。
もちろん、単純にバス停の事情を知らないちょっとかわいそうな男であるということが事実である蓋然性は高い。
しかし、そうでなかった場合の可能性を排してまで、他人に助言染みた声かけをする勇気は出しにくいという人が少なくないのではないだろうか。迷惑そうに返事を返されたりでもしたら、ちょっとした損を被った気分になるかもしれない。

シャイニーカラーズに登場する他のアイドルならどうするだろうか。三峰は恐らく同じような理由で声をかけないという選択をする気がする。
めぐるの場合であっても様々な可能性を勘案した結果、親切心からのスルーを選ぶ可能性は考えられる。果穂ならば、或いは迷いつつもおずおずと話しかけに行くのかもしれない。


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 そして、浅倉透は何の気も無しにあっさりと声をかける畑の人間である。
彼女との出会いはこんな風にして始まる。

 これは親切心のみから来るものというわけではないだろう。
後々の言動を見ていけばわかることだが、透は赤の他人から自分がどう思われるかというような問題に強く意識を巡らせるタイプの人間ではない。透にとっては先述のような声をかける際について回るリスクや体裁などは、重要かどうかという以前に思案すべきタスクにすら登録されない。
他人にあまり関心が無いからこそ声をかける。
単純に「今、なんとなく駅に行くのだとすれば歩いた方が早いのにと思ったからそのように声をかけた」といった風なプリミティブな原理から出た行動であるように見受けられる。

 そして声をかけられた男こそ、我らがシャニPことプロデューサー(主人公)である。

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徹底して顔を隠すスタイル

カードイラストに見切れて映り込む断片や、コーヒージャンキーな一面から勝手にツインピークスのデイル・クーパー捜査官の様な風貌を推測しているが、今のところシャニPが夢に出てきたチベット民族から心と身体を一体化させて直感を研ぎ澄ます演繹法的テクニックを学んだ様子も、変な部屋に25年間も閉じ込められていた様子も見受けられないのでもしかすると間違いかもしれない。
そもそもアイドルマスターシャイニーカラーズのプロデューサーとはプレイヤーたる自分のことなのでこんなイケメンではあり得ない。

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閑話休題。
アイドルマスター世界のプロデューサーと美少女が邂逅するとどうなるかというと、当然の帰結としてアイドル勧誘が発生する。それは浅倉透の場合においても同様であり、プロデューサーは自分に(東京都内であるにも関わらず)田舎のようなバス停の運行事情を教えてくれた少女にスカウトを試みる。

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お約束だが不審者である。当然冷たげにあしらわれる。バス停を歩いて去ろうとする浅倉。慌てるプロデューサー。そして

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この発言の直後、セピア調の回想演出の様なものが挟まる。誰かがなにかを話しているが内容は示されない。

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(浅倉透コミュでは、回想と現在とのクロスカッティングのような台詞合わせ、BGMの有無やSEの使い方で間を作り緩急を表すなど、時間を意識させる映像的な演出が多用される)

プロデューサーの発言が自分の中の何かと重なった様子の浅倉は謝りつつ去りゆく彼に対して待ったをかける。

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かくしてバス停での邂逅は終わる。そしてなんと次の場面転換の後では既に契約が成立しかけているところであり、おもしろい程にあっさりと透はアイドル道の第一歩を踏みしめる。

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何故透はプロデューサーの誘いに乗ったのか。あの時バス停でプロデューサーの発言と何が重なったのか。全ては後々のコミュで明かされることだが、結論だけ先に言うとするなら、浅倉透という人間は大変なロマンチシズムを有する人間だったのである。

「人生」

 大仰なコミュタイトルだ。しかしこの大仰なものを浅倉透は日頃からうっすらと意識しながら生活している。

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透は幼い頃からジャングルジムを登る夢を何度も見ている。「一つ足をかけるともう上が見えない」。そして長いと感じる。
透が人生に退屈を少なからず感じていることはこのコミュを最後まで読めば明白なのだが、他方ジャングルジムという物体は登るために存在する遊具であり、目的を達成するには己の体を使い能動的に動く必要がある。
夢の中で上が見えないジャングルジムを何度も登る透は、それを自分の人生に見立て、人生長いなんて悟ったようなことを思うほど辟易としている。が、ジャングルジムに足を付け、登攀を試みたのは透自身である。後々のコミュと擦り合わせると、透には漠然とした上昇志向、より丁寧に言い換えるなら何らかの目的に向かって進みたいという願望が通奏低音として存在するように思える。

 透が起床し、場面が切り替わりテレビ局へ。挨拶回りに来た透とプロデューサーに行く先々でスタッフやモデルが挨拶を送ってくるという描写が続く。果ては番組のディレクターまでもが一目見ただけで好印象を抱き、仕事の話を冗談交じりに持ちかける。透には人を惹きつける生来の何かがあるという説明として機能するシーンだ。

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有名な芸能人と間違われているのではないか、と言うプロデューサー。当の本人は気の無い様子。さして興味も無いのだろう。

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学校や日常の中でもこのような扱いを受けることは少なくないのかもしれない。

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目的もなく登り続けるジャングルジムは透にとって果てしなく長く退屈なものだ。透はジャングルジムを登る理由となる何かを求めている。アイドルとしての活動に、その何かがあるのではないかという思いが垣間見える一幕。

「あれって思った」

どこで何がだ。
実際、「あれっ」と透が感じるポイントは複数個所存在する。

とある日のオーディション。抜き打ちでの自己アピールを課された透は、求められているものとズレた表現を提示してしまう。

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土壇場で考えたとすれば咄嗟の機転が利きすぎるモブアイドル達。やはり名乗り口上は日頃から考えているものなのだろうか。

帰り道で己の準備不足を詫びるプロデューサーに対してそもそも何がいけなかったのかわかっていない様子の透。初めて会った時のバス停に辿り着く。
プロデューサーは少し座って話そうと持ちかける。

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浅倉透共通コミュをここまで読めば余程勘の悪いか、若しくは余程物語慣れしていないような人間でもない限り、「プロデューサーは忘れている、ないし浅倉透と紐付いていないが、透の側は覚えていて気づいてもいる何らかの共通の出来事」がこのバス停の周囲で過去に発生していることが察せられる。

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あっさりと物語上の重要情報を開示するプロデューサー。少しの動揺を見せる透。1つ目の「あれっ」ポイントがここだ。プロデューサーは昔ジャングルジムに登ったと話す。忘れていたわけではなかったのか、という驚きの「え......」。しかし続いて話すプロデューサーの口から出てくる言葉は「男の子」。当然透の性別は女性なので記憶に齟齬が発生している。「あれっ」。

場面は転換し、幾日かが経ったある日。オーディションの結果が判明し、落選した旨を透に伝えた上での会話。

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あれっポイントその2。と同時にその3。思い出の中の彼であると思われるプロデューサーが連れてきてくれた世界。それは透にとって、ジャングルジムを登る目的が見つかるのではないかという期待から生じる差によって、少なくとも普段の生活よりは先の不透明なものではない。

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同コミュ別選択肢より。オーディションでの自己アピールは簡素なものだったが決して適当に考えたわけでもなく、落ちたことがショックであることも本心だ。だのに自分の気持ちは全然と言ってよいほどプロデューサーに正しく伝わっていない。「あれっ」

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同コミュ別選択肢より。プロデューサーは、自分はまだ透を理解できておらず、そのために透に自分のことをもっと教えてくれと言う。
透はそれに対し、一方の選択肢後の会話では「私は前からプロデューサーのことを知っていた気がする」と話しているが、もう一方の選択肢の後には「プロデューサーのことを知りたい」と言う。プロデューサーのことを知っている気でいたが、実は大して知らなかったということにこの時透は気づいたということだ。
何を以って透がその事実に気がつき、何に「あれっ」を感じたのかはこの時点でも理解可能だが、直接的な答えが次のコミュにて示される。

「ていうか、思い込んでた」

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またも透の夢から始まる。
つまりプロデューサーは「ジャングルジムの君」であったということである。
透にとってジャングルジムの君とは言葉を交わさずとも同じ「てっぺん」へ向かって共に進んでくれる理解者だ。
前コミュでの3つ目の「あれっ」は要するに透の「ジャングルジムの彼」観とプロデューサーの乖離を原因としている。夢でよく見るジャングルジムの彼と違い、目の前の男は自分のことをよく理解していないと宣う。「あれっ」。
2つ目の「あれっ」を発生させた、自分の気持ちが全然伝わっていないという事実は単なるコミュニケーションの失敗に対しての「あれっ」に留まらず、そのまま3つ目の「あれっ」を誘発させるものとして機能する。
透が思い描くプロデューサーとの関係というものは口頭での複雑な意思伝達が必要となった時点で既に失敗しているのだ。ジャングルジムの君は言わずとも自分と心が通い合っていなければならない。

それにしてもたった一回、遥か昔のジャングルジムエンカウントのみで一定の相互理解を果たすなどあまりに無理筋な話である。
しかし透にとってはそれほど根強く記憶に残っていた思い出であったのだろう。
このように思い出が先走ることは懐古補正、思い出補正などと呼称され、広範な人間が頻繁に発症するが、透の場合はこの思い出に対する気持ちが大き過ぎて自分の人生における理想の象徴と化してしまっている。
誰かと一緒にジャングルジムに登ったという、人によっては他愛のない出来事を高校生になっても夢で見るほどに意識し続ける理由は、実際のプロデューサーとのジャングルジムギグの様相が判明し始める後半を読み進めると掴むことができる。
ここにおいて最も重要なことは、自分の人生の象徴的な局面に一回ぽっきりでたまたま現れた人物との再会に、(しかも100%の同一人物だとは言い切れないにも関わらず)現状自分が生きる上で抱えている問題に対する切片を見出すような、夢見がちな一面が浅倉透には存在するということである。

かわいい。


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透の夢モノローグから場面は変わり事務所。プロデューサーは透に日記をつけてもらうことにする。あからさまな対比だ。夢の彼とは違いプロデューサーは自分のことを理解してくれていない。あまり乗り気ではない透。

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夏休み中盤に差し掛かった小学生の日記みたいな内容。
やる気がないので適当に書いていると読み取れなくもないが、そうではない。
ノクチルのサポートコミュを見てもわかる通り、透はプロデューサー以外にも基本的に他者と言葉を用いてコミュニケーションを図る際にあまり多くの言葉を用いない。

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並べるとなんだかぽやんとしたアホのようだが、人の言葉に対する透の反応は基本的にこんな感じだ。
「いいね」「ヤバイ」「普通かな」卑近な言葉をよく使う。
しかしそれは意図的に自分から発する情報量を絞っているわけではなく、そうとしか思っていないからそれ以上に語る言葉が存在しないのである。事実、自分の言葉の意図について説明を求められるいくつかのシーンにおいて、透は付加できる情報があれば付け加えるし、本当にその通りの意味しか無いのであればそう説明する。
先のオーディションの自己アピールはその性格が端的に表されたものだ。
オーディションの場において、透は自分を開示できていないと周りから見られたわけだが、本人としては思ったことをそのまま言ったつもりなので、それで伝わらないならどうすればよいのか見当がつかないといった具合なのだろう。
普段共に過ごしているノクチルのメンバーは全員幼馴染であり、透のパーソナリティにもある程度の理解を示している。だから透はその中で過ごす分には表面上問題なく自分の意図を相手に伝えることができている。
しかし、プロデューサーが良い例となっているが、透のことをよく知らない純粋な他者では意思伝達はそうスムーズに運ばない。
恐らくだが元よりこのような、言葉を考えるという作業にも慣れていないのではないだろうか。

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樋口が事務所入りした透を心配するのもむべなるかな。

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最終的に透は日記に「旅に出ます」と書き記す。読んだプロデューサーはあらぬ心配を抱いて透を探しに街を奔走するのだが、実際のところこの5文字に「旅に出る=気分転換に出かける」以上の意味合いはない。
旅という言い回しもジャングルジム王子であるはずのプロデューサーとの関係が機能不全を起こしている現状を少なからず憂いた透がセンチメンタル寄りのウィットを利かせて考えたというあたりが妥当なところだろう。
タイミングが悪いのでプロデューサーの誤解は無理も無い。が、心配される側の透は、自分の日記を読んだ彼がどう思うかなど考えてすらいない。

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どうも思わないだろうと思っているからである。
公園にて透を見つけ走ってきたプロデューサーに向かって透はこのように言う。
この「誰も気にしないでしょ」という台詞は今までの透の人生における基本スタンスを表しており、大きく遡ってバス停に声をかけた透の行動につながる。
自分が他人に及ぼす影響、ひいては他者の存在にあまり関心が無い。だから他人が自分をどう思うかというところまで頭が回らない。

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希代の不思議ちゃんを前にして遂にPのメンがヘラる。

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 無視できないほどのすれ違いを起こしてしまった2人。
透のプロフィールの特技欄に記載されてある「人の顔を覚えるのが得意」という項目がどの程度のものなのか、現状では正確に知る由もない。しかしいくら記憶力が良いとはいえ、小さい頃に一度だけ会った名も知らない他人の顔を完璧に覚えていられるのだろうか。ましてや年月の経過と共にプロデューサーの顔の造りだって多少は変化を経た筈だ。
自分の確信があまりに傍証の少ない、思い込みに近いものだったことに透がこの時点で初めて気づいたのか、それとも薄々であってもその可能性を承知していたのかどうかは定かではない。
どちらにせよ幾年も夢で見るほどの思い出を共有したただ1人の人物に対して人違いを起こした透の落胆は計り知れないものだっただろう。

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しかし注目すべきはプロデューサーのメンヘラ三択後、その対話である。
透は人違いを認識した落胆を抱えつつも、どの選択肢においてもプロデューサーに対して謝罪、感謝の言葉を紡ぎ、「今度はちゃんとわかった」と言う。
これは嘘ではないだろう。浅倉透は思っていることと反対のことを言うようなテクニックを使う人間ではない。それを言いたいという気持ちが落胆よりも表に出て来たのだ。

運命的な再会や、心が通じ合えば話さずとも分かり合えるなどというロマンチックな考えを透は改める。プロデューサーは前からずっと自分のことがわからない、だからもっと教えてほしいと言っていた。
そうか、わからないのか。言わずとも通じるなんてことは思い込みだったのだから、それはそうだな。まずは心配してくれたお礼を言おう。勝手に思い出の中の人物と重ねていたことも謝ろう。
そうして透はプロデューサーと向き合う準備を始める。


シーズン3クリア後コミュ

三次審査を通過した透。プロデューサーが報告すると嬉しそうな様子を見せる。

プロデューサーとジャングルジムの彼が人違いであったと思い至った後も、透はアイドルを続けている。当然だ。やめる理由がない。元より透はアイドルの活動が楽しくないなどと言ってはいないのだから。オーディションに落ちたことがショックなくらいには気持ちも入っている。裏の意図を勝手に考えていたのはプロデューサーである。

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しかし、理解しようとずっと努め続けていたのもまたプロデューサーであり、今回は正しく自分の感情を読み取ってくれている。透はその努力に応えるように正解の旨を伝える。

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今度はきちんと感情を伝えるつもりだ。その意向をプロデューサーに口頭で伝える透。自分とプロデューサー両方に対する確認のようにも聞こえるぎこちなさが微笑ましい。
ここが浅倉透とプロデューサーの再スタートのラインである。


「ちゃんとやるから

引き続き日記を続けている透とプロデューサー。

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相変わらず簡素な文章の透。しかし苦笑しつつもそれを読むプロデューサーに不安を感じている様子は無い。相互の理解が進んでいる証拠だ。
その夕方、外から事務所に帰ってきたプロデューサーの前に透が姿をあらわす。

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透も、彼女なりに自分が見て、感じたことを共有しようと努力を続けている。
「話してくれるようになって嬉しい」と笑うプロデューサーに少し照れながら「私が無口みたいじゃん」と返す透。
「違うとは言い難いけどな」
「もう」
軽口は自然に流れていき、関係の軟化を感じさせる。
そしてプロデューサーはもう一度、昔ジャングルジムに登った話を始める。最近よくこのことを思い出すのだそうだ。「あれっと思った」での会話がトリガーとなったのか。

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透は学生時代のプロデューサーと一緒に登った思い出が起点となってジャングルジムに登る夢をよく見るようになったわけではなく、元々そのような夢を見ていたということがここで語られる。
「人生」での冒頭のモノローグと合わせて浅倉透には元来上昇志向のようなものがあるという考察の補強としたい。

一度は勘違いとみなした「ジャングルジムの彼=プロデューサー」がもう一度、今度は確かな確証を持って蘇る。
しかし、それでは透があれほど夢見た理解者であるジャングルジムの彼ですら透のことをツーカーで理解できていたわけではなかったことになってしまう。
だが、そうであったとしても今の透はそのことにショックを受けたりはしない。
なにかを誰かに伝えるためには言葉が大事であるということを既に知っているからだ。アイドルとしての活動はその事実を確認するための十分な認識を既に透に与えている
ジャングルジムの彼とはプロデューサーという別の存在として、言葉を用いてお互いに歩み寄ることもできた。

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そして何よりの理由がある。今の透にはてっぺんが感じられているのだ。一番求めていたもの、ジャングルジムを登る意義。それが見つけられないがために透は過去の一瞬を夢見続けていた。しかしてっぺんはジャングルジムの彼ではなく、プロデューサーによってアイドルという形で示された。
紆余曲折を経て透はてっぺんを今まさに捕捉せんとしているのである。

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あの日が特別だったのは透だけではなかった。一生懸命な透の様子はPの目にも、それを見た時の感情と共にたしかに焼き付いていたのだ。

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そうして透は夢の光景が自分にとっての人生の象徴足り得た本当の理由に気がつく。
あの日に幼い自分が気づけなかったこと。
ジャングルジムを登りきったその時に、自分の姿を見ていてくれた誰かと光景、嬉しさを共有したことこそがあの思い出の根幹だったのだ。

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今ならあの時の嬉しさが誰かと一緒に何かを達成した喜びから来るものだと正しく理解できる。幸い相手だって近くにいる。立ち上がる嬉しさ。
その思いもプロデューサーと共有するために律儀に言葉にする透。

完全に1人の人間の成長を描き切っている。これキャラの初登場と同時実装の共通コミュなんですけど...


シーズン4クリア後コミュ

第四審査の突破を告げるプロデューサー。嬉しいけど実感が湧かないと言う透。
ここまで来たらもうすれ違いは完全に解消できている。

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一緒じゃなければ意味がない。そのことを今の透はわかっている。

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あとは登るのみである。


WING準決勝〜決勝

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準決勝前の一幕。おそらく多くの人がやられたであろう透が珍しく勝ちへの意欲を見せるシーンだ。
朝コミュの運命の話もそうなのだが透はどこか運命というものをわりと真剣に信じている節がある(まあプロローグの行動からしてその傾向が見られるのだが)。
運命を信じるか聞いた際に、

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冗談だと言うと不機嫌になる。

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自分の体験に交えてまともに聞くと一拍置いた後に、ゲーム的に画面手前にずいと迫って「運命だね」と言う。
やはり根本的にロマンチストな面がある。こりゃ間違いない。

そして準決を下し決勝での優勝後、舞台袖での会話

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他人の感情を能動的に想像することが無かった当初の透からの成長を感じさせる台詞。共に登るパートナーも嬉しくなければならない。

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エピローグコミュ「人生、長いから」

WING優勝後、またもや公園で佇んでいた透。
流石に2回目ともなれば少しは慣れたのかPもあっさり探し当てる。
透の回想と思われる描写が始まり、遂に過去の公園での透と学生シャニPの邂逅が具体的に描かれる。

バスを待つ学生に話しかける少女。プロローグでの透とPの会話内容とほぼ同一である。

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何故過去の透がボクっ娘だったのか非常に気になるがここのライター陣はボカしたままにしそうな気がしなくもない。
ジャングルジムを凝視する透に対して「遊んできたら」と提案する学生。逡巡する透。

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過去の思い出においても透をてっぺんへと誘ったのはプロデューサーだった。この体験を透が言わずとも通じ合ってると解釈したのかどうかは少々判然としないが、そうであったとしたも不思議ではないだろう。
ジャングルジムへと一人走り出し、「来たくなったら、おいでよ」と告げる学生P。
プロローグコミュで「俺が、行くからさ!」を聴いた時、透が一番強く連想したフレーズはこれではないかと思う。ジャングルジムへと誘ってくれた運命の言葉。ロマンチストな浅倉透は時空を跨いで響いてきた「おいでよ」に、今の自分を賭けたのだ。

このシーンでは物語のクライマックスに呼応するように、プロローグから繰り返されてきたクロスカッティング的回想演出が畳み掛けられる。

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変わって現在。熱気から逃れて涼んでいたと言う透はあっさりと今まで秘めていた事実を話す。
そもそもどうして今まで話さなかったのか。告げるタイミングならいくらでもあった。「ちゃんとやるから」中の夕方の会話など特にうってつけだったはずだ。
ジャングルジムの彼ではなくプロデューサーと向き合いたかったという面もあるだろう。だかやはり根底にあるものは先に自分で思い出してほしいというような、親しみやすさすらある普通の気持ちではないだろうか。
何故今そんなことをと聞くプロデューサーに透は自分のことをちゃんと伝えようと思ったからと話し、でも、と続ける。

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もし、こちらから明かすのではなくプロデューサーが自分で気づいてくれたなら。
そんなことが起きたならばこれほどチャーミングなこともないだろう。
透からすればそれこそ運命というものだ。

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あの日と同じ言葉を、今度は自分から誘う立場で言う。
一人で公園のジャングルジムを登る透。

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何故時間がかかるのか。
ずっと胸の奥に残り続けてきた思い出を打ち明けるのだ。自分の気持ちを表現することにまだ慣れていない透にとっては一朝一夕で言葉を選ぶことはできないだろう。
透は自分の気持ちを伝えることに時間をかけるやり方を選び、プロデューサーが思い出すことを急かしもしない。
焦る必要はない。ジャングルジムのてっぺんはまだ遠いのだから




おわり

正直プロデューサーが自分で思い出す確率、めちゃくちゃ低いと思うんだけどどうだろう。
忘れているわけではないというのが痛い。ただその記憶の中の子どもが浅倉透にどうしても結びつかないのだ。何故なら男の子だったと思っているから。
となればもう思い出すべきことは何もないわけで、プロデューサーに残されたタスクは透とあの時の子どもの顔の一致に気づくことのみである。
エピローグにおいてあそこまで透が匂わせても怪訝な反応を返すだけの男が気づけるのだろうか。
いやあ......
なのでエピローグ直後に思い出すパターンが一番自然なのだが先日実装されたPSsrのコミュではそこについて一切触れられていなかった。おやおや。


朝コミュについてはWING前とも優勝後とも取れるように作ってあるように思える。


1万字超えてた。俺やっぱ浅倉透のこと好きかもしれん


応用編近日書きます。

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