“モクチンレシピ”が切り拓くリノベーションの民主化
デザインをひらいていくことで、結果として社会課題に対応していく。モクチンレシピを提供するNPO法人CHArの連勇太朗氏に、オンデザインパートナーズ西田司氏が訊く。2022年3月14日、Arts Chiyoda 3331 ( https://www.3331.jp/ ) で開催された「#新しい不動産業 Meetup @東京」セッション7のサマリーをお届けする。
※ 研究所会員は全てのセッションをノーカット映像でご覧いただけます。
築年数の古い賃貸を魅力的に再生するためのツール「モクチンレシピ」
連さんはこれまで、「つながりを育む、まちをつくる」ということを行なってきた。地域やまちに広がっていく、次世代に求められる住環境モデルの発明と実装を続けている。モクチンレシピはアイデアの集まり。概要書や図面をダウンロードでき、組み合わせれば、誰でもカンタンに使えるものだ。物件オーナーや工務店、不動産管理会社向けの会員サービスとしてメンバーズ会員制を用意。LINEでのクリエイティブ賃貸ゼミや、学習プログラム、仲間も増えていき、サポートも受けられる。
モクチンレシピ ( https://mokuchin-recipe.jp/ )
新しい不動産業ネットワークをつくっていく「パートナーズ with CHAr」
地域密着型の不動産屋さんのネットワークを始めた。現在20社ほどが利用。ワンルーム、1Kから始めることができる。地場の管理会社さんのリテラシーが上がっていくことが大事。結果、魅力的なまちへとつながっていく。スーパーユーザーとして、既に市内で50戸以上のリフォームに活用している方も。そういったことに関心のあるユーザーが集まっていく。
パートナーズ with CHAr ( https://www.char-partners.jp/ )
いくつか具体例に触れながら。後半は西田さんが連さんに聞く。
専門性がなくても関われる状況づくり
サービスと実態、いずれが先か。つながりやネットワークの時代。不動産屋さんと動いていく中で、このサービスが必要であるという実感度が高まっていると連さんは言う。地域の生々しさとサービスのバランスがとれていきます。社会課題として認識すること。たくさんある課題には多くの人が関われるよう、わかりやすいように開いていくべき。モチベーションは、デザインを開いてアクセスできるようにすること。理解してもらえるような機会づくり。伴走していくことが大事だ。
一緒に行うインタラクティブなおもしろさ?
レシピ自体は共有の資源と考えている。多くの方からフィードバックをいただくことで育っていく。地域差や使う人によって進化したり組み合わせたりのおもしろさがあるのだ。まちへの理解や、地域の変化を学ぶことができる、大きめのフィードバックもあるそう。ユーザーさん同士のつながり、学びあえる仕組み、広がりにつながるといい。
具体例を交え、ディスカッションは続く。後半では、俯瞰した「まちづくり」という言葉や「空き家問題解決」が、現場でうまく響かないのはなぜかと言う問い。プレイヤーのみなさんとの対話を通して目の前の課題を考えていけば結果として解決されているのではないか。はっとされる方も多いのでは。頭でっかちはいけない。新しい不動産業に期待されることの一つではないだろうか。西田司さんのファシリテーションはさすが。
●登壇者紹介
連勇太朗(むらじ・ゆうたろう)
NPO法人CHAr 代表理事
明治大学理工学部建築学科専任講師
株式会社@カマタ共同代表
1987年生まれ、幼少期をロンドンで過ごす。2012年慶應義塾大学大学院修了、2015年慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得退学。学生時代にモクチン企画を起業、2018年に@カマタを法人化、2021年より明治大学で教育・研究活動に従事(建築計画研究室主宰)。主な著書に「モクチンメソッドー都市を変える木賃アパート改修戦略(共著/学芸出版社)ほか。モクチンレシピで2015年グッドデザイン賞受賞、他受賞多数。
西田 司(にしだ・おさむ)
株式会社オンデザインパートナーズ 代表取締役
オンデザイン代表、東京理科大学准教授
1976年神奈川生まれ。使い手の創造力を対話型手法で引き上げ、住宅からパブリックスペースまでどの規模でもオープンでフラットな設計を実践する設計事務所オンデザイン代表。都市や建築における人の集まる場の実験やコミュニケーションの可能性を探る実践を行っている。主な仕事として「ヨコハマアパートメント」(JIA新人賞、ベネチアビエンナーレ審査員特別表彰)、「湘南港江ノ島ヨットハウス」(日本建築学会作品選奨)、島根県海士町の地域学習拠点「隠岐国学習センター」、復興まちづくり「ISHINOMAKI 2.0」、DeNAベイスターズが仕掛けるまちづくり「THE BAYSとコミュニティボールパーク化構想」、「街のような国際学生寮」、工事現場の仮囲いをひらく「吉日学校」など。
東京理科大学准教授、大阪工業大学客員教授。ソトノバパートナー。建築とカルチャーを言語化するメディア「BEYOND ARCHITECTURE」発行人。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?