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note63 スピンアウト戦略で多角化経営          ~1社10億円でも10社できたら100億円グループ〜

映画がヒットすると、脇役だったキャラクターを主役にした「スピンアウト(スピンオフ)映画」を作ることがあります。元の作品のキャラクターや世界観を引き継いで、新たなストーリーを展開する独立した新作品です。
 
映画「踊る大捜査線」の時に話題になりました。
本編に出てきた2人のサブ主人公が独立して、「交渉人 真下正義」「容疑者 室井慎次」が、「踊る大捜査線」のキャラクターのままで新しい映画となりました。
室井慎次のスピンアウト映画は、今年は更に2本公開されるとか。
 
こういう手法を「スピンアウト」又は「スピンオフ」の作品といいます。
 
置き換えて、ビジネス界でも多く見られます。
既存の組織や事業から、派生した新たな部門や事業が分離・独立するケースです。
 
エンターテイメント企業のディズニーはまさにスピンアウトの典型と言っていいでしょう。
元々はアニメーションの制作から出発しました。
その後、ミッキーマウスを軸にいろんなキャラクターが生まれ、事業としても映画、テレビ、テーマパークへと広がりました。
更にホテル、様々な舞台ショー、ホテル、旅行、グッズ、ゲーム・・・等。
私はオーランドに行った時には、リゾートそのものが町になっていました。
もちろんディズニーの世界観は全ての事業にしみわたっています。
 
日本の中小企業でも多く見られます。
以前お訪ねした大分県のホテル。
事業を拡大するためにどうしたらいいか?と悩んでいました。
一番の悩みは、ホテルは箱商売なので、室数以上の売り上げは有りません。
そこでそのホテルは好評だったレストランの自家製デザートスイーツをスピンアウトさせて、独立したスイーツ専門店を作り、市内に路面店を出店したのです。
自分たちが持っている強みを切り出して、事業を展開しました。
ちなみに、私からは更に一歩進んで、そのスイーツを通販に載せられればマーケットは全国に広がる旨、お話しさせていただきました。
 
熱海の古屋旅館さんも同じパターンですね。
旅館の軸はぶらさずに、旅館の食事で培った甘味づくりを独立させて、路面店を展開し、賑わっています。
 
スイーツをスピンアウトさせるなら、パンもあるのでは。
ということで事例を上げますと、パレスホテルが代官山にベーカリを出店します。
一流ホテルのパンが街で手軽に買えるのは魅力ですね。
 
私が2016年に取材させていただいた会社で、北海道のヤマチユナイテッドという会社があります。
この当時の事業規模は年商160億円。現在は256億円なので、8年間で100億円近い増と着実に成長している企業です。
創業当時は建材の問屋業でしたが、その後、生活関連全般に広げ50事業(2016年時点)に多角展開しています。
全てが法人として独立しているわけではないですが、軸になる事業は建材の流通、住宅建築、リノベーション、デイサービスなど。
その後さらに広がってインテリア、カフェレストラン、ホテル、貸事務所、駐車場管理等々。
ベースにある考え方は、1社10億円の事業が100社あればグループで1000億になる、という考え方です。
社長は連邦経営と言われていましたが、各事業は独立したローカルルールもありながら、全体には社風を崩さず、シナジーでお互いを高められています。
 
私から言わせればまさにスピンアウト戦略そのものだと思います。
 
スピンアウト思考で広げていく時に必要な思考は「俯瞰思考」。
そもそも何を提供したい会社か?
という理念の原点を考えると良いでしょう。
 
以下に少し案を書きますと・・・
住宅販売会社 ➡ 家族団らん。家族の繁栄。幸せな生活を創出。
バス会社 ➡ 人を運ぶ ➡ 地場の繁栄。地場の賑わい作り。観光促進。
本屋さん ➡ 本の販売 ➡ 知の提供。知の高めあい。子供の成長と教育。日本語の勉強。朗読。
ホテル、旅館 ➡ 宿泊は本業 ➡ 料理で展開。観光促進。地場のコミュニティー。女将の料理教室。ツアー。

作図  KOZ

次に、多角経営もここまで来ているという実例があります。
最近のニュースから。
 
新潟市ではんこを製造する大谷。はんこの売上で全国1位を誇っています。
しかし、はんこ工場の隣で2019年、ウイスキーを造る会社「新潟小規模蒸溜所」が設立されました。
印鑑会社がウイスキー?
 
「脱ハンコ」という世の流れの中で市場の先細りが見えてきました。
たまたま社長が昔からジャパニーズウイスキーが大好きで。日本のウイスキーも高くなり、手が届かなくなるという話を夫婦でしたときに、社長の奥様が、「だったら造ればいいじゃない」と言ったのが、きっかけになったそうです。
 
世界的権威のある大会「ワールド・ウイスキー・アワード」の日本予選で、部門別の“最高金賞”を受賞。イギリスで開かれる最高審査に、日本代表として進みました。
 
まさに「2刀流大谷」ですね。
 
しかし驚いたことに今度はウナギの養殖事業に参入するようです。
本社敷地内に養殖池を整備し、本格的に養殖を始めるようです。
子会社の蒸留所が手掛けるウイスキーの製造過程で生じる温水や麦芽かすを養殖に活用する計画で、新たな事業の柱の一つに育てるとか。
 
はんこ事業とのシナジー効果があるかどうかはわかりませんが、チャレンジ精神は半端ないです。
 
熱海では自動車教習所がハンバーガーを始めました。
熱海市の自動車教習所などを経営するマジオネットグループ(東京都)は飲食業界に参入し、4月中旬、グルメバーガーショップ「TB burger 」を全国展開目指す、というニュースを目にしました。
自動車教習所がスピンアウトでハンバーガー事業。注目したいです。
 
岡山にある両備グループは1910年に西大寺鐵道として創立されました。
以来、100年を越える歴史の中で水平に垂直に事業展開を進め、現在は企業数約50社、従業員数約10,000人を擁する企業グループとなっています。
 
両備グループを構成する事業セグメントは4つ。
さまざまな交通モードに対応し旅と移動を楽しく演出する「トランスポーテーション&トラベル部門」。
新たな技術で次代を創る「ICT部門」。
暮らしを支え暮らしを楽しくする「くらしづくり部門」。
都市再生と新時代のまちづくりに挑む「まちづくり部門」。
これら事業4セグメントに、
「社会貢献部門(美術館運営、生物学分野等への助成活動、地域公共交通維持のための研究所運営などに係わる)」を加え、地域を応援し地域とともに発展できるよう、日々力を注いでいます。
そのフィールドは岡山を軸として国内はもとより東南アジアにまで拡がりました。
※同社ホームページの経営理念から一部引用
 
私は以前から、てっきりバス会社とばかり思っていましたら、とんでもない、何とも面白い展開をされていて、なおかつ、私が思うに楽しさや面白さ、豊かさなどを巻き込んだ広義のエンターテイメント思考の事業展開だと関心を持っています。
 
ご自分の事業は、「一体何のためにやっているのか」。
原点を振り返って考えれば、スピンアウトで何ができるか見えてくると思います。
もちろん一つを深堀するのも大事ですが、複業や多角経営は案外時代にマッチしているのではないでしょうか。
 
 

ついでに、こちらが現在私が熱海で活動している会社です。
お問い合わせはこちらまで。


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