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まどろみの中で

新幹線に乗っていて、好きな時間帯がある。15時から18時頃だ。

のぞみのような速達タイプに乗っていると、停車駅が少なく、停車駅と停車駅の間も長い。そのため、必然的に人の動きも少なくなる。走行中、会話をしている人はまずいない。また、物音も少ない。聞こえてくるのは、列車の走行音だけに等しい。完全に1人の、誰にも邪魔されない空間が、そこにはある。

外に目を向ければ、美しい夕焼けが見えてくるような頃合いだ。夕焼けによって、ビル、山、海、湖、木など、あらゆる風景に「美補正」がかかる。ありとあらゆるものが輝いて見えるのだ。その景色を見ていると、この時間がいつまでも続いてほしいと思わずにはいられない。

しかし、このゆったりとした時間は、2時間も経たずに終わってしまう。この儚さも、この時間帯が好きになった理由なのかもしれない。ごく限られた時間帯にしか得られない美、そしてその空間。そのことを意識的、無意識的に理解しているからだろう。

目的地に着く頃には日が暮れ、夜の世界が待っている。18時頃にもなれば帰宅ラッシュに巻き込まれ、一気に現実と喧騒の中へと放り込まれてしまう。「夢の世界」の終わりである。

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