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腰椎分離・すべり症

こんにちは。みるめATです。さて前回は腰部脊柱管狭窄症について投稿しました。今回は腰椎分離・すべり症について執筆したいと思います。皆さん、腰椎分離症とすべり症の違いを明確に理解していますかとりあえずテリアの首輪の疾患でしょ?となっていませんか。今回は腰椎分離症とすべり症に対してまとめていきたいと思います。

◯腰椎分離症・すべり症とは

腰椎分離症とは椎骨後方にある椎間関節突起間部(上関節突起とした関節突起との間)に亀裂が生じる病態の事。

腰椎すべり症とは亀裂が進行して上関節突起と下関節突起が離れ、椎体全体が前方へ移動する病態の事

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上の図は左が椎間関節突起間部に亀裂が生じて分離症を発症しています。右の写真は椎間関節突起部が離れて椎体全体が前方に移動し腰椎すべり症を発症しています。

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左の図が正常な方の腰椎です。中央の図は腰椎分離症一番左の図は腰椎すべり症まで進行している方の腰椎の図です。文字で説明するより図を見た方が分かりやすいと思い2枚ご紹介しました。

◯発生機序

・腰椎分離症

好発部位は第1位はL5、第2位はL4とされています。なぜ、下位腰椎に多いのでしょうか。発生機序を理解することが大切です。まず下位腰椎の解剖を少しおさらいです。

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ご存知の様に脊柱はそれぞれ頚部は前弯、胸椎は後弯、腰椎は前弯し生理的弯曲を形成しています。ここでは腰椎の前弯について触れていきます。腰椎は前弯位をとっていますが、生理的弯曲自体が骨盤の傾斜に影響されやすいとされています。骨盤が前傾位であれば腰椎は前弯が増強し、後傾が強ければ腰椎は前弯が減少し、後弯位となります。

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上の写真を見てもらうとわかる様に、仙骨傾斜角に影響を受けます腰椎の中でも上位腰椎に比べ下位腰椎のほうが骨盤の傾斜に影響を受けやすいことがわかります。ちなみに仙骨傾斜角は25°〜40°です。水平面に比べて上位腰椎は緩やかな角度を示していますが、下位腰椎にいくにつれて角度が急になることがわかります。そのため下位腰椎の椎弓には伸展ストレスが加わります。ただでさえ普段から伸展しているところに伸展させられるので下位腰椎は負担が増えることで受傷します。

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伸展動作の繰り返しにより椎間関節にストレスが加わり障害が発生します。また、椎弓の関節突起間に伸長ストレスが繰り返し加わると腹側より疲労骨折が生じて背側に伸展し、疲労骨折を生じます。(分離症)

ここまでが腰椎分離症の発生機序となります。

・腰椎すべり症

腰椎分離症が進行し、下関節突起が下方の椎骨と連結し残った状態のまま、上位の椎体が前方にすべることを言います。Meyerdingの分類が有名です。滑りを認める下位の椎体に対して上位の椎体が前方にすべると前方すべり後方にすべると後方滑りと表現します。基本的に今回は前方すべりの話をしていきたいと思います。

Meyerdingの分類
grade① 25%未満
grade②  25-50%
grade ③ 51-75%
grade④ 76%-100%

下の図を参考に前方へのすべり度に応じてgradeが分けられます。


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◯症状

・腰痛、臀部痛、大腿後面痛、下肢痛や痺れが主症状
・長時間の立位や腰椎伸展で増強することが多い
※無症状の腰椎分離症やすべり症もある

◯治療方針

まずは保存療法が推奨されます。保存療法の場合はコルセットの着用が必須となります。また、スポーツなども全面禁止です。

滑りが認められないものに関しては分離部修復術を行い、すべりが認められるものに関しては固定術を行います。

詳細は前回投稿しました腰部脊柱管狭窄症の記事にありますのでそちらをご覧ください。


◯運動療法

これまで述べてきた様に腰椎の伸展や回旋による負荷が大きくなることで腰椎分離症やすべり症が発症する。そのために腹部筋へのアプローチや股関節などのストレッチングがよくリハビリや運動で実施される。

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何個かの研究をまとめて私なりの考察をしていきたいと思います。

◯研究まとめ

スクワットやフォワードランジ動作で腰椎分離症の方々は腰椎伸展角度が大きい
一側下肢挙上でのフロントブリッジで腰椎分離症の方は体感不安定性を認める
腰椎分離症の方は大腿四頭筋の柔軟性の低下を認めた。
腰椎分離症の方は後屈運動する際に膝関節の運動開始が遅れ、その分を腰椎の伸展で代償する

大腿四頭筋をはじめとした股関節などの柔軟性の低下が仙骨傾斜角を増強させ、腰椎分離症・すべり症の原因になっていることがわかります。また、片足立ちなどの不安定な環境下でも体幹の安定性や股関節の筋力の向上も必要です。フォワードランジはストップ動作にも繋がってくるエクササイズになります。ストップなどの片足立位の際に腰椎分離症の方は体幹不安定性の増加と腰椎伸展の増加するということですね。体幹の不安定性なので安定性を担保する為に腰椎の伸展で代償することも考えられますね。この研究内容から様々な要因が考えられますね。

様々な研究内容をもとに仙骨傾斜角と体幹の安定性が一つキーポイントかなと思いました。腹横筋なども収縮する際に骨盤を後傾させる機能があります。大腿四頭筋だけではなく体幹の安定性が増すことで仙骨傾斜角は緩やかになることが考えられます。

やはり股関節と体幹が大切ですね。

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◯腰椎分離症に対して段階的評価と運動療法基準

ある研究で腰椎分離症の疼痛などのgradeに沿って運動療法基準を作成したものを指導するとどうなるかという研究がありました。とても面白いと思ってこちらで共有します。

◯5段階の評価方法

①→クッション等を腹部前面に配置し股関節が軽度屈曲状態でのうつ伏せ姿勢で疼痛が出現する。
②→①の姿勢で疼痛が出現しない
③→うつ伏せ姿勢でも疼痛が出現しない
④→①の姿勢から股関節自動伸展で疼痛が出現しない
⑤うつ伏せの股関節伸展で疼痛が出現しない

◯それぞれの段階に合わせた運動療法

①→背臥位での股関節ストレッチ、ドローイン
②→座位での体幹筋の等尺性運動を追加
③→うつ伏せ姿勢での腸腰筋や大腿四頭筋のストレッチ
④股関節周囲筋の積極的な筋力強化を追加
⑤座位、立位での積極的な体幹筋強化、更にスポーツ活動に即した運動などを開始

◯運動開始後各症例が評価段階⑤まで改善するのに必要として期間

①平均2.1ヶ月(3例)
②3ヶ月(3例)
③2.5ヶ月(3例)
④3ヶ月(1例)

全て平均3.3ヶ月で疼痛なく全例競技復帰した。n数は少ない研究ですがとても面白い研究だと思いました。シンプルですが症状を評価し状態に合わせた股関節周囲の柔軟性と体幹筋力の向上が青年期の腰椎分離症・すべり症に効果的なのだと感じました。

◯終わりに

また長々と投稿してしまそうなので、ここらへんで区切りたと思います。

腰椎分離症・すべり症に関してまとめていきましたが多くの研究結果からいろいろな見方がされていてとてもまとめていて1人でワクワクしていました。次回からはどうしようか検討中です。

肩関節に入ろうかなあ。肩関節調べたくてうずうずしてます。

今回も最後までご覧いただきありがとうございました。


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