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腰椎椎間板ヘルニアについて

こんにちは。ATみるめです。

今回は腰椎ヘルニアについてまとめていきたいと思います。スポーツ現場でも整形外科でも多くみられる疾患だと思います。まずは病態理解から術式によるリスク管理や運動指導までまとめていきたいと思います。

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◯腰椎椎間板ヘルニアとは

椎間板の退行変性変化や機械的刺激の蓄積によって発症。椎間板線維輪が損傷し、椎間板の髄核が脊柱管内部へ膨隆あるいは脱出し、脊髄神経を障害し様々な症状が出現する。

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◯症状

・下肢の痺れ
・感覚鈍麻
・筋力低下
・腰痛
・下肢痛
など

◯なぜ椎間板は変性するのか?

前回の腰部の解剖でも前述しましたが、解剖についてさらっと解説します。ゲル状の髄核を線維輪が取り囲む構造をしています。

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椎間板への栄養素や水分の供給は荷重と非荷重が繰り返されることによって循環されます。荷重時には椎間板へ圧縮力がかかり椎間板内の水分が拡散されます。非荷重位には椎間板内が陰圧となり水分や栄養素が椎間板に循環します。

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下の図はよく見る椎間板への圧を姿勢ごとでまとめた図になります。立位での椎間板圧が100として他の姿勢を比較しています。椎間板に荷重がかかる状態が続くと椎間板内の水分が拡散してしまい、椎間板の水分量が減少してしまいます。なので立位より座位の方が椎間板への圧力は高いのでデスクワークしている方などは椎間板の変性が起きやすいです。また前屈みで物を持ったり、作業する姿勢に関してはさらに椎間板への圧が高くなるので重労働者の方や介護の方も椎間板変性が起きやすくなっています

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◯鑑別について/画像診断/整形外科的テスト

画像診断はMRIが有用となりますが、椎間板変性は20歳代で3割に生じています。症状の出現していない椎間板の膨隆やヘルニアも相応の頻度で存在することも事実です。そのため、画像検査のみで診断することはせずに、理学的初見と合わせて診断される。

・SLR テスト/Lasegue 兆候/Bragard テスト

SLRテストは坐骨神経の障害の有無を確認する検査法。検査法方法としては仰臥位で膝伸展位で下肢を挙上する。下肢の伸展挙上が70度未満で大腿後面から下腿後面にかけて放散通が出現するとL5/S1神経根が圧迫され神経障害の可能性がある。Lasegue 兆候は股関節と膝関節90度屈曲位の状態から膝関節を伸展させていく。同様に大腿後面と下腿後面に放散痛が出現するかを確認する。こちらは坐骨神経の膝レベルに伸長ストレスを与えた検査法になります。Bragard testはSLRテストで下肢放散痛が消失する角度まで降ろし、足関節を背屈することで下腿放散痛が出現した場合はSLRテスト同様にL5/S1の神経根の神経障害の可能性があります。足関節レベルに伸長ストレスをかける方法です。

・後屈テスト/Kemp's testテスト

後屈テストは脊柱管狭窄症や腰椎椎間板症、椎間関節障害や椎弓疲労骨折(分離症)などで疼痛や下肢への神経症状が出現します。テスト方法は後屈テストは腰椎の伸展をしてもらいます。その際に本来であれば股関節の伸展と腰椎の伸展が協働し動作を行います。しかし、股関節伸展筋にタイトネスがあると股関節の伸展可動域が出ずに腰椎の伸展で代償します。そうすると脊柱管や椎間孔が狭小化腰椎椎間板への圧縮負荷が向上脊柱管狭窄症や腰椎椎間板関節症などがあると腰痛や下肢への神経症状が出現します。

後屈テストは左右同時に圧縮負荷をかける検査ですが、そこから左右への鑑別などはKemp's testを用いることが多いです。テスト方法としては後屈テストで腰椎を伸展させた状態から検査側へ側屈させます。ここまでで検査が終了なこともあればここから同側回旋させる事と反対側回旋方法もあります。検査方法については後屈テストもKemp's testも椎間関節障害や椎間板症などの評価となるので、椎間関節などは侵害受容器が多く、疼痛も出現しやすいので腰椎の伸展と側屈で既に疼痛が出ているのにそこから無理に回旋などやらせなくてもいいのかなと私は思います

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FNSテスト(大腿神経伸張テスト)

大腿神経の障害の有無を確認する検査法。腹臥位姿勢で検査側の膝関節を屈曲90度位に保った状態のまま、股関節を伸展させる。股関節の伸展に伴って大腿前面に放散痛が出現すると L2,3,4神経根が圧迫され、神経障害が起きている可能性がある。


◯手術について

まずは、ヘルニアの手術適応に関してです。基本的には最初に保存療法が選択されます。十分に保存療法が施されているのに効果が乏しい場合手術治療を検討します。ただし、進行性の麻痺(急激な下肢筋力低下や膀胱直腸障害等)を呈している場合は手術治療を早急に選択します。

腰部椎間板ヘルニアに対しての手術を2つご紹介したいと思います。

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・MED(内視鏡下腰椎椎間板摘出術)

こちらは内視鏡下で椎間板ヘルニアを摘出する術式です。傷口が18mm〜20mmと小さく、入院が約4〜6日(病院によって違いはあります。)で退院までが早く、日常への復帰なども早いとされています。スポーツ復帰は約3ヶ月前後で復帰する症例が多いようです。

・FED/FESS(完全内視鏡下腰椎椎間板摘出術)

こちらも同様に内視鏡下で椎間板ヘルニアを摘出する術式です。傷口が8〜10mmで筋肉の剥離が最小です。MEDよりも入院が約3〜4日(病院によって違いはあります。)で退院までが早く、こちらも日常への復帰が早いです。スポーツ復帰は6週〜8週(約1ヶ月半〜2ヶ月)で復帰することが多いようです。

術式によって復帰時期や傷口の大きさが異なったりするので選手の術式を把握することは大切ですね。

◯運動指導について

腰椎椎間板ヘルニアに対してのリスク管理は以下になります。

・椎間板内圧の上昇を防止

運動処方する際には頭に入れておく必要があります。

まず、椎間板内圧の上昇させてしまう運動や動きをおさらいしましょう。

下記の図は前述しましたが、様々な動きの中で椎間板内圧がどのように変化するのかがまとめてある図になります。左が日常生活動作右が運動時のものになります。

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左の図の座位姿勢の腰椎屈曲位(前傾姿勢)が一番椎間板内圧の上昇が高い事がわかります。その次が立位での前傾姿勢です。その次に右の図の臥位(膝関節屈曲位)での上体起こしの姿勢ですね。やはりどの姿勢でも腰椎屈曲や体を前傾させるような姿勢では椎間板内圧が上昇し、椎間板へのストレスが大きいのでこのような動作は避けておきたい動作です。

アスレティックトレーナーとしては見ておきたいポイントがあります。

前屈姿勢を行う際に脊柱の屈曲や腰椎の屈曲のみでの動きだと椎間板内圧が上昇してしまうので、股関節の屈曲と骨盤の前傾を伴って前傾の動きができているのか動作を評価する事が大切です。

下記に写真を載せます。初めて撮影し作成したのでセンスは大目に見てもらえると幸いです・・・。笑

2枚写真を載せています。

上の写真は骨盤と脊柱の連動ができていないスクワット、前傾姿勢ですね。

これだと椎間板内圧が上昇し、髄核が後方に移動しストレスがかかってしまうのがわかると思います。

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下の写真は骨盤と脊柱の連動の連動したスクワット、前傾姿勢になります。

そうすると脊柱の弯曲も調和が取れ腰椎の過度な屈曲が減少し椎間板内圧の上昇を防ぐ事ができます。

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骨盤と脊柱の連動ができなくなる問題には様々な問題がありますが、今回は一つ取り上げていこうと思います。

写真にもありますが、ハムストリングスのタイトネスにより骨盤の前傾が取れなくなり骨盤と脊柱の連動ができなくなるケースがあります。もちろんハムストリングスだけが問題ではありません。

今回は腰椎の屈曲を取り上げましたが、上の図でもあるように屈曲動作の次に椎間板内圧にストレスがかかる動作は腰椎の伸展動作です。

こちらもリスク管理として動作を評価する必要があります。

様々な問題解決のために評価し、仮説を立てて戦略して欲しいと思います。

最後は駆け足になってしまいましたが以上になります。

腰椎ヘルニアの病態を理解した上で、リスク管理の把握、運動指導する際の注意点や動作評価、仮説、戦略と同じ疾患でも人の体は違うので一人一人を評価する事が大切になります。

本日は以上になります。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

みるめAT

埼玉県在住/整形外科クリニックにて運動指導

県内の部活動や強化選手などのサポート

Dr.やPTと共同して運動指導する中でATが運動指導する際に病態理解や術後のリスクなど把握するべき内容を投稿しています。病態理解や術後リスクを把握した上で運動指導できるATを増やしたい。ATの地位向上のために私ができることを。スポーツ現場だけではなくATの活動の幅を広げるために日々活動中。


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