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あれに乗れば…

駅。 地元へ向かう電車を待つホームで、逆方向へ走っていく新幹線を恨めしく見つめるばかり。 なぜ私は帰らねばならないんだ。 あれに乗ることができたら。ここから走り去ることが出来たら。 騒音からクロスフェードするようにして、アナウンスが鳴った。 駅。 自転車置き場に向かう途中で、渋谷行きの夜行バスを呆然と見つめる。 なぜ私は帰ろうとしているんだ。 あれに乗れば、乗ってしまえば、ここを忘れることが出来るのに。 エンジンの止まったバスを見つめる視界の隅で、スタンドの外れる音

    • きもち。

      「何が食べたい?」「何が好きだった?」「何かしたいことはある?」 私を気遣って色々な質問をくれる。 「なんでも食べれますよ」「全部楽しかったです」「新しくしたいことは特にないです、」 曖昧な答えばかりを送り返す。 肩透かしを食らわせていることに優越感すら抱いていた。 「何を考えているか分からない。」 真剣にそう言われて始めて、この人を傷つけているんだと気が付いた。 私に歩み寄ろうとする人間で、自己防衛という名の元に遊んでいたのだと気が付いた。 それからは変わろうと思い至

      • 1年目の誕生日

        朝起きてリビングに行くだけで貰えた「おめでとう!」の言葉。 一人暮らしを始めた今年はない。 もちろん電話はくれるし、友人も祝ってくれる。 しかし自分事のように喜んでくれるあの場面に遭遇することはもう無い。 それが大人になるってことなのか、と寂しさはあまり感じなかった。 誕生日まで残り5時間、バイト中だった私は社員さん達に呼び出されてロッカールームへ。 何かやらかしたのだろうかと冷や汗をかきながらドアを開ける。 「お誕生日おめでとう!」 そんな声に顔を上げると目の前にはHap

      あれに乗れば…