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あれに乗れば…

駅。
地元へ向かう電車を待つホームで、逆方向へ走っていく新幹線を恨めしく見つめるばかり。

なぜ私は帰らねばならないんだ。
あれに乗ることができたら。ここから走り去ることが出来たら。

騒音からクロスフェードするようにして、アナウンスが鳴った。

駅。
自転車置き場に向かう途中で、渋谷行きの夜行バスを呆然と見つめる。

なぜ私は帰ろうとしているんだ。
あれに乗れば、乗ってしまえば、ここを忘れることが出来るのに。

エンジンの止まったバスを見つめる視界の隅で、スタンドの外れる音がした。

駅。
乗り換えをする改札で、新幹線口の看板を見つめる。

なぜ私は何も感じないのだろうか。
嫉妬で苦しくなったあの感情はどこだ。胸を焦がすようなあの想いはどこだ。

何事も無かったかの様に目を逸らしたその先で、ICカードのタッチ響いた。

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