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子どものSOSに気づく トラウマにしないために

大変な正月になってしまった。
被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。

悲惨なニュースを見ていると、
いたたまれなくなって、目を背けてしまう。
その一方で目が離せなくなって、
ずっと辛いニュースばかり
追ってしまうこともある。
そして気が付かないうちに、
心に強い負担がかかり続けていることがある。
それは大人でも、子どもでも一緒だ。

うちの長女は大変繊細で
ショック映像など頭に残りやすい。
うっかり自分が見ていたニュースの
衝撃的な場面をみせてしまい、
(そうはいっても知らないわけにもいかない)
明け方まで眠れなくなって、
私の所眠れないとSOSを出してきた。
前の晩は友達を楽しそうに電話していたので、
大丈夫だと思い込んでいたが、
どうやら脳裏の映像は消えなかったらしい。

「ちょっと衝撃が強すぎてしんどくなった。」
自分で言えるようになったか。
成長を感じつつ、
ホットミルクを飲ませて隣で寝てやった。

成長を感じる。
というのは、こんなことがあったからだ。

今から三年前のこと。

珍しく何の予定もないのんびりな朝で、
子ども達とホットケーキを作って
食べようとしていた。

やたらと外が賑やかで、
救急車や消防車が通る。
我が家から総合病院が近いので
サイレンは慣れているものの
「ちょっと近いんじゃない?」

リビングの窓から異変は見えない。
音のする方が玄関だったので、
ドアを開けてみた。
目の前に火柱が立っていた。

うちは高台に建っていて、
となりの団地の3階がうちの1階の高さ。
1階の一部屋が焼けていて、
ずっと上まで黒い煙が立ちこめていた。
子ども達にも声をかけたが、
二人とも言葉を失っていた。

近所の人と消火活動を祈りながら見守る。
数時間が経ち鎮火した。
高齢で足の不自由なおじいさんが
逃げられなかったとニュースで知った。
何も知らなかった。
隣の建物でも。

私は教育相談の先生をしているので、
トラウマについて勉強したことがある。
今回の火事がそのトラウマになる可能性が
あることは分かった。
だから子ども達には話をした。

「もしかしたら、急に涙が出たり、
ドキドキしたり、お腹が痛くなることが
あるかも知れない。
それは心が悲鳴を上げていること。
おかしいことじゃない。
いつもと違うことがあったら教えてね。」

しばらくは火事の匂いが残り、
大きな焼け跡もそのままだった。

次女は近くを通るのが怖いというので、
その場を通る登校には一緒に付き合った。
でも長女は「私はこんなの全然平気」と
気丈に振る舞い登校した。

その日の昼休憩。
長女の学校から電話が入る。
なんでも鉛筆が握れないほど
手が痛いらしい。
体育があったわけでも、
ぶつかったりもしていないけど。

とりあえず鎮痛剤を持って行き、
様子を見た。
やっぱり心の問題なのでは?

次の日も電話が来た。
今日は足首。
歩いて帰れないほど痛むようで
車で連れて帰った。
原因は特に思い当たらない。
明日はどこが痛くなるかなあ。
と言ってみる。本人は困惑している。

次の日はお腹だった。
思い当たると言えば、もう火事しかない。

「たぶんね。痛いのは心なんだと思うよ。
心が痛くても、
他の場所に痛みが出ることもあるんだよ。
あなたはいろんなことを感じやすいから、
自分では平気と思っていても
こうやって体が教えてくれるんだよ。」
「そんな事ある?」が返事だったけど。

母の勘としては多分合っていた。
その後しばらくして痛みは出なくなった。

繊細な彼女はその数ヶ月後、不登校になった。
原因はよく分からないし、一つではない。
でも、この「感じやすさ」が関係しているのだろう。
先の先まで空気を読んで、
人の迷惑や周りからどう思われるか、
分かってしまう長女。

いろんな経験を経て、
自分の心に起こっていることを
自分の言葉で言うことが出来るようになってきた。
今回のことは大きなショックだったのだろうが、
成長しているとも感じる。
私にSOSを出し、私も寄り添ってやることが出来た。

これから災害復興に向けて
いろいろなことが動き出すだろう。
でも、直接被災された人を助けるだけでは
足りないのだと知っておきたい。

そこに家族や友人がいなくても、
被災地のの現実に心を痛め、
何か出来ることはないかと右往左往する私たち。

まず。
ちゃんと自分の心を見ているか。

それから。
声なき声を聞いているか。
社会的弱者といわれる小さな子ども達、
障害のある人、高齢者、
自分の意思を伝えるすべのない人。

本人がうまく言えないときは、
代わりに言ってあげる。
「怖かったね。傷ついたよね。
 どうしたらいいかわからないよね。」

体が痛いなら、優しくさすってあげる。
出来るなら、ぎゅっと抱きしめる。
その温かさにきっと
抱きしめた方も安心できることもある。

SOSの出し方は人それぞれだ。
怖いときに怒る人、攻撃する人もいる。
理解をしていれば、
「ああこの人怖いんだな」と
こちらも無駄に傷つくこともない。
知っていれば防げる傷もある。

どうぞ、自分の心に目を向けて。
できるなら自分では出来ない人の分も。

こんな時こそ、
前を向いて自分のやるべきことを
やれる大人に私はなりたい。
傷ついた人が傷つきっぱなしに
ならないように今できることをやる。
そして、じぶんのことも大事にしながら、
今を生きる。


まずは自分を助けてあげていい。
自分がしんどいときは2023年6月17日の
「まずは、自分の酸素マスクをつけろ」
を読んでください。

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