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強運の持ち主 シロクマ逃亡記5

運の正体はタイミング だと聞いた。
とすれば、私は強運の持ち主と言うことになる。

前回の逃亡記から一ヶ月の間に
私には色々なことがあった。

前の家〔夕陽の家〕から、
今の家〔パンパー〕に引っ越しした。
パンパーに荷物を運び込み、
夕陽の家をきれいに掃除し、
たくさんのものを捨てた。

引っ越しはかなりの体力がいったし、
事務手続きや段取りもたくさんあったので
かなり大変だった。
が、少しずつ体調を見ながら
自分のタイミングを大事にやったので
何とかやりきることができた。
働きながらではとてもこなせない
業務量だったことは間違いない。

休みはじめて約二ヶ月。
だんだん元気になってきた。
今日は何を作って食べようか。
片付けのついでに晩ご飯の仕込みをする。
急がず、イライラもせず、ご飯を作るとか、
ここ何年もやっていなかった。
何なら、初めてに近い。

ご飯を作りながら、私料理嫌いだと思ってたけど
そうでもないかも、と考える。
長女は
「お母さんご飯作るのスキだよ。
 知らんかったの?」
と言う。
知らんかった。
忙しすぎただけか?
疲れすぎてて、余裕がなさ過ぎて
惣菜とか外食とかに頼っていたのか。

元気になってきたから、
今まで本当に慢性的に疲れていたのだと気づく。
いつも口内炎があって、体が重くて
夜は気絶するように寝た。
心と体をすり減らして、ヘトヘトで生活を回す。
濡れた服がずっと張り付いているそんな感覚。

無駄なものをたくさん買ったり、
いつもお出かけをしていたのは、
何とか「今、ここ」を変えたかったのかも。

今は普通の生活が楽しい。
朝起きて顔を洗って、窓を開ける。
ご飯を用意して、洗濯物をたたむ。
洗い物をして、コーヒーを入れる。
一日のスケジュールを考えて、日記を書く。

パンパーは緑がたくさんあるところで
どの窓からも外の緑がきれいに見える。
家の中も今まで自分が大事にしてきた
ものだけを運び入れたので、
どこを見ても目が喜んでいるのが分かる。

外の緑が美しいとか、
朝日がきらめくのは感動するとか、
風が気持ちいいとか。
新しい家と言うだけで嬉しいけど、
それだけじゃないことを
パンパーは教えてくれる。

ぼーっとする時間は
今まではもったいないと思っていた。
今は今この瞬間をぼーっと生きようと思える。
今を味わう。

木の葉が揺れている。
雲が流れている。
鳥が鳴いている。
洗濯物が乾く。
大根の味噌汁が美味しくできる。
子ども達が元気に帰ってくる。
庭木の水やりで木が喜んでいる気がする。
体も心も完全じゃないけど、
心は軽くなっている。

いつも全力で脇目も振らず働いてきた私に
「これからもその生き方を続けるの?」
神様に聞かれているそんな日々だ。

私が日々を楽しんで笑顔でいるだけで
喜んでくれる人がいる。
最近いい感じだね、肩の力が抜けたね。
そう言われる。
「楽しい」ことを味わう時間が嬉しい。
「味わっている」と気づけるのも嬉しい。
「楽しい」とつぶやくことを
喜んでくれる人がいることも
とても嬉しい。
私の笑顔に価値があると思える。

働けなくても、生産性が低くても
私が私でいることに、価値がある。
私も自分を大事にしている実感を持てる。

これからも、こういう生き方がしたい。
働くけど、自分をすり減らさずとも
生きられる生き方。
この家で心も体も健やかに生きていける方法を
考えている。

私は不運にも働けなくなった。
でも、このタイミングが最高だった。
私は最高に運がいい。

もっともっと働いて
取り返しのつかない事態になっていたかも。
今で良かった。今止まれて良かった。
無理矢理に時を止められなければ、
私は止まることができなかった。

人生の後半。いかに生きるか。
神様の出してくれた宿題。
緑を見て、風を感じながら考えたい。

※パンパー… 
自分を甘やかす。好きなようにさせる。
と言う意味。

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