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スーパーカブを売ってロクに査定されず終わった話

ホンダのスーパーカブ110を売った。

理由は乗らないまま実家に放置しているのがもったいないし、台風などで倒れたりして窓を割ったりするかもしれないという心配があったからだ。

(カブ自体の歴史について30分ほど書いたのだがあまりに長くなるのでたった今消した)

3年半前の事。しばらく中国で製造されていたスーパーカブが2017年の秋にまた日本製に戻ってきてデザインも従来のかわいらしい丸目ヘッドライトに戻ると聞いて、迷わず新車を購入した。

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当時もう少し大きいバイクに乗っていて、大きなバイクの取り回しの悪さに不満を持っていた為、カブのコンパクトさはとても気に入った。

しかし購入同時私はフリーターでもうすぐ30を迎えるという事もあってアルバイトを辞めて就職活動に専念することを決意。

また就職活動が終わりやっとこさまともな会社に就職した所でVRに出会い休日は専ら朝から晩までVR漬けの日々。

せっかく買ったカブにあまり乗ってあげられない…

更にその後実家を出て一人暮らしを始めたが、住んだマンションにバイクの駐輪場が無いため実家に放置。

実家に顔を出した時にしか乗らないという状況だった。

その為もう自分が独占していてもこの子が可愛そうだろうと思い始め、売却を考え始めた。

新車で購入し走行距離は778kmという、それはもう本当に可愛そうでしかたない状況だった。

加えて台風が来るシーズンになると「実家のバイク大丈夫かな…倒れてないかな…窓割ってないかな…それで家族怪我してないかな」などと心配でしょうがない。何よりカバーを掛け直してもらったりなど家族に手間を掛けさせてしまう。抜け出すには手放すしかないのだ。

Twitterで引き取り手の募集をざっくり書いたが反応も薄く、買取をしてくれる業者を探す。

以前別のバイクを手放した時に利用した買取業者は評判が悪く実際自分も不満だった。

さてどこにしようかと迷っていたところで「SOX(ソックス)」を見つける。

SOXは全国規模のバイク屋で中古バイクを探す時にはまず目にするであろうメジャーな会社だ。

この手の大手は通常は評判が悪いというのが世の常だが、SOXのWEBページからすぐ値段がわかる無料査定があったのでとりあえずでそちらをやってみた。

というのもバイクの売却は査定見積もりを行うサービスが各種あるのだが、車種や走行距離などを入力して最低額を見るには電話番号を登録する必要があるケースが多く、査定額が提示された瞬間に連動している各種業者にその情報が出回りそこから1分もしない内に買取業者からの電話ラッシュが始まるのが通常だ。

そんな中電話番号やメールアドレスの入力もなしにバイクの情報を入れただけで大まかでも事前査定額が分かるのはかなり珍しく、そこでの数字も平均15万円ちょっとというかなり嬉しい数字だった。

早速電話をして実際に車体を見てもらい詳細な査定額を出してもらいたいと相談したところ、3日後の土曜日の昼過ぎでどうだとこれまた都合のいいスピーディーさ。

GW中に実家に顔を出した時にもうバイクを手放したい旨を家族に話しつつ入念に洗車をしていた為、査定当日は午前中に実家につき次第ガソリンスタンドで空気圧を調整を済ませ(空気圧だけタダでやらせるわけには行かないので給油もした)、SOXの出張買取担当者の到着を待つ。


予定時間になり担当者と合流。

大柄でありながらどこか丁寧そうなおじさんだった。

いよいよここからバイクの査定が始まるのだと緊張が走った。

車種や走行距離情報でのネット事前査定は平均が15万円ちょっと。ここからどう変わるか…


担当者「買取査定を行います○○と申します。本日は宜しくお願いします。」

私「よろしくお願いします。こちらが依頼したバイクです。」

担「なるほど…流石走行距離が少ないだけあって綺麗ですね。転倒もなさそうだ。各種動作も問題なさそうですね。」

私「そうですね、先程ラストランをしてみましたがセルも一発で起動しライトやブレーキも正常でした」

担「(ブォォン)そのようですね……ここまで来るともうライバルが新車になるケースなんですよね。」

私「え?はぁ…(てか全然チェックしてる感じしないけどいいのかな)」

担「フルノーマル車でウチで出せる最高額なんですが、17万5千円で如何でしょう?」


タイトル回収。

ロクに査定してもらわなかった。タイトルに偽りなし。

入念にチェックして難癖つけて買取額安くするなどもなく、パッと見て最低額が提示された。

それが低い額なら不満もあるのだが、高く提示されるものだから驚いた。

念の為SOXでこの車種のこのランク帯を販売する時の値段を見たのだが、正直この提示額で私から引き取ってもロクに利益にならないだろうというギリギリの額だった。

バイク屋は売買そのものより整備費や各種面倒な手続き代行費で儲けを出すビジネスモデルなのは知ってはいたが、それにしてもギリギリだ。

こちらとしては願ったり叶ったりな為この額で承諾。

(実は念の為で「これ以上上がらないか?」と切り出したが、流石に限界らしく渋られた)

必要事項に捺印やサインをして、買取額の振り込みは週明けになるなどの説明を受けて手続き終了。


軽トラに乗せられていく元相棒。

(写真を撮ったが他の人のバイクのナンバーも映っている為掲載無し)

お前との日々は楽しかっt…いや、あんまり思い出無いわ…ごめん


手続きの書類にサインをしている時に買取おじさんと話したのだが、サインをしてトラックに乗せた後に「やっぱり売れません!ごめんなさい!」とお言うお客さんも居るという。トラックに乗せられると見栄えが良くなってしまうらしい。

また他のお客さんでは25年も一緒に過ごしたバイクを遂に手放すという事で訪問したが、同じくサインをした後にそのバイクとの思い出がこみ上げてきて号泣してしまう方も居ましたね との事。25年も乗っていればもう我が子同然なのだろう。

対して女性のお客さんは比較的あっさりしている傾向にあるとも聞いた。確かにバイク売却で涙する女性の姿はあまりイメージわかないなぁと思う。


何はともあれ、こうして3年半乗った(殆ど乗ってない)バイクとさよならをした。

とてもあっさりと、まるでお前とこのバイクとの思い出なんてそんなものだろうと示すかのように、新品同様のバイクの査定は一瞬だった。

バイクにとって新品同様の姿というのは、手入れをしているというよりも放置しているという証拠になる。それだけ乗ってないし特別な思い出もない。

手にした17万5000円という高額な売却額は、「もっと走りたかった」というバイクの悔しい気持ちを表しているのだろう。



ありがとう。全然乗ってあげられなくてごめんな。次はもっとお前をかわいがってくれるオーナーさんとたくさん旅してこい。


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