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『もろともに あはれ思へ 山ざくら 花よりほかに 知る人もなし』大僧正行尊

《意味》
私がお前を愛おしく思うように、お前も私のことを愛おしく思っておくれ、山桜よ。私にはお前の他に気持ちをわかってくれるものもいないのだから。


孤高に咲き誇る桜。その堂々たる姿に、心奪われる一首です。

この歌の作者・大僧正行尊は、藤原道長に圧迫により立場を追われた三条院という帝のひ孫です。10歳で父親を亡くし、12歳で出家。修行を重ね、大僧正という、僧侶の官位としてのトップにまで上り詰めました。

行尊が山中でしていた修行とは、まさに命懸けのものです。奈良吉野の大峰という山で行っていた回峰行。食べ物も水も口にせず山中を巡り、日毎にその距離を延ばしていく。死と隣り合わせの厳しい崖や深い谷を巡りながら祈りを捧げていきます。今回の一首は、そんな山中で行っていた厳しい修行の中で、行尊が桜に出会い詠んだ一首ですが、もう一首、行尊が修行の中詠んだ歌があります。

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