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『心にも あらで憂き世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな』三条院

《意味》
儚さを感じる美しい調べ。
しかしその裏には、深い深い絶望と諦めの念がありました。

この歌の作者・三条院は本当に恵まれない、不遇な人生を歩まれた人生を歩まれた方でした。
父は病弱で奇行の多かったとされる冷泉天皇。皇太子となられてから25年もの間、待ちに待った即位は36歳の時。しかし当時その権力の全てを手中に入れようとしていた藤原道長により退位を迫られ、たった5年で在位を終えます。
在位中にも二度、住まいである内裏が火事で消失。緑内障を患っていたとされ、日に日に視野を失いつつありました。
心優しくおっとりとしていて、世間から愛されていたと伝わる三条天皇。さすがにこの数々の障害に心折られ、泣く泣く退位を決意します。
今回の一首は、その決意の中で詠まれた歌と伝わっています。

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