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『あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかもねむ』柿本人麿

《意味》
山鳥の長く垂れ下がっている尾のように、いつまでも明けないこの秋の夜長を、恋しいあなたに会うこともできず、ただひとり寂しく眠るしかないのだろうか。


「あなたのいない夜は、さみしい。」
ストレートな想いに、細かな技の光る一首です。

この歌の作者・柿本人麿は、歌の神様・歌聖と呼ばれる存在です。「いろはにほへと」の色は歌を作った人物であるとか、和歌をもって日本国家を形成しようとしていた持統天皇の右腕だったとか、さまざま伝わっています。
兵庫県明石市にある柿本神社、人丸神社とも呼ばれますが、こちらは柿本人麿が祀られたものです。彼の歌には不思議な力が宿るとされ、全国あちこちで歌と共に祀られています。
宮廷歌人の第一人者として活躍したことからその名声が広くとどろき、神として崇められ、そして作者のわからない古い名歌は全て人麿作とされるほどになります。

実は今回の一首も、本来は作者不明のものがそのまま人麿の作とされたものです。しかしそうなってもおかしくないくらい、細かな技がこの歌には散りばめられています。

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