見出し画像

『白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける』文屋朝康

《意味》
秋の野の草むら一面の白露に、風がしきりに吹きつけると、紐で結ばれていない水晶たちが散りこぼれていくようだなぁ。

美しく散っていく白露。そのきらめきがあざやかで、目が離せなくなる。
秋の一幕を切り取った、映像の一首です。

この歌の作者・文屋朝康は、前回ご紹介した「吹くからに」の文屋康秀の息子です。父・康秀も秋の風を詠んだ一首でしたが、今回のこの歌も秋の美しい風を詠んでいます。

朝の秋の野原。膝までになるだろうか、一面に広がる草に水の粒がまあるくまあるく宿っている。そこにざっと吹く、一陣の風。陽を浴びて水の粒たちがころころときらめきながら散っていく。
少し湿気は含んだものの、秋の軽やかさを確実に運ぶ風。その色まで感じさせるようなの、見事な描き方です。

ここから先は

902字
毎週水曜日に更新。AuDee「あすなのいろはおと」をより深く楽しんでいただける情報をお届けします。番組に届いたお便りの返信も音声にて配信!ぜひ一緒に楽しんでください。

AuDeeにて放送中の百人一首と音楽を掛け合わせる番組「いろはおと」で取り上げた歌の解説と手書き原稿の公開をしています。 また、番組でいた…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?