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『思ひわび さても命は あるものを 憂きにたへぬは 涙なりけり』道因法師

《意味》
思い通りにならない恋に嘆き苦しんで、それでも命は長らえているのに、つらさに耐えきれずにこぼれているのは、涙であるよ。


つらいつらい恋の想い。叶わぬ片想いの一首です。

この歌の作者・道因法師、俗名は藤原敦頼といいました。晩年の歌人として知られており、年を重ね90歳になり耳が遠くなった後も歌会に通い、熱心に勉強をしていたとか、和歌の神様が祀られている住吉神社に、毎月参拝していたとか、さまざまな逸話が残っています。

「思いわび」。『わぶ』とは「〜することに疲れる」という意味。
想っても想っても叶わない恋。それでも思うことがやめられず、思うことに疲れ切ってしまった。食事も喉を通らず、このまま命が尽きてしまっても良いと思うほど。しかし露のように儚いはずの命は散ることなく長らえていて、その代わりかのように涙がはらはらと零れていく。

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