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少人数の作品だからできる、リスキーでスリリングな音楽

先日まで、ミュージカル『タリータウン』という作品で演奏していました。ご来場いただいた皆様、ありがとうございました!

商業的な作品とは違って、出演者3人、ピアノ1台というかなりコンパクトな編成で上演したのですが、逆にその分一人一人の担う役割の比重が重く、かなり濃密な作品になりました。

公演はもう終わってしまったのですが、海外キャストバージョンのCD、曲が素敵なので是非聴いてみてください。

私は大人数の出演するミュージカルでも演奏しますが、少人数のキャスト、楽器で作られている作品ならではの面白さ、お客様に伝えられるメッセージの強さ、に特に魅力を感じています。

単純に作品そのものにも面白いなと感じる部分はありますが、今日はプレイヤー(演奏者)の視点から、少人数作品の魅力について書いてみます。

舞台は生物(なまもの)と言うくらい、ミュージカルの中で行っている芝居は、同じ台詞を喋っていても、日によって少しずつニュアンスや間、緩急などが異なります。それに併せて歌い方を少しずつ変えたりもしています。
ただ、入り組んでいる、例えば群衆のシーンなどでは、その日の気分で全員が動いてしまうと事故が起きてしまうので、そのような場面での芝居の自由度はあまり高くありません。

音楽チーム(演奏者側)も同じで、音楽も日々の役者の芝居に合わせて演奏していくわけですが、ダンスシーンなどのカウントが大切な曲や、大掛かりな舞台装置の移動が伴う曲、などでは、基本的には予定通りの演奏を行います。

このように、規模の大きい舞台では、役者、演奏者共にリスクを負えない箇所というのがある程度あります。

それは重々承知の上で、なのですが、私の個人的な趣味としては、もともと安全で予定調和な音楽・演奏があまり得意ではなくて…😂

実は子供の頃、ポップスの曲にあまり興味がなかったのですが、その理由の一つが、
(当時私の知っていた)ポップスはずっと一定のリズムを刻んでいて、音楽の変化が少なくスリリングさが足りない、ということでした。
(当時の私の知識の無さも原因なので、それは一旦置いておいて。)

一方、ミュージカルの音楽、特に心情の変化を音楽で表現していく曲について、既に野生的な感性を持っていた(?)子供の頃の私は、その起伏の激しさ、スリリングさをとても気に入りました。

そのため、ミュージカルの曲を演奏するとなると、事故が起こらないギリギリまでスリリングに、聴いている方の心を強くノックするような演奏をしたくなる本能があるのですが(笑)、それを可能にしてくれるのが、今回のような少人数の作品です。


『タリータウン』の舞台写真


稽古場では、その曲のどの部分をピアノで表現すれば良いか、どこからの表現を役者にお任せするか、などを役者とディスカッションしたりしました。特に、タリータウンは美しい音楽が多かったので、いかにそこに味付けをするか、音楽の表面的な骨組みと戦って、複雑で強い感情を表すか、などをよく試していました。

本番では、役者の芝居を見ながら、次の曲は恐らくこんな風に歌うだろうな、と予測したり、その言葉をそのようなニュアンスで歌うなら、ピアノではこの曲の持っているこっちの方の側面を表現したら良いかな、などを瞬時に、独断で判断して弾いていました。
指揮者のいない、一対一の演奏なので、そのような判断をフットワーク軽く行うことができます。
役者の皆さんも私も、全員がリスクの高い挑戦をしていて、その瞬間瞬間をスリリングに、
且つとても楽しんで演奏することができました。

勿論、個人的には課題はあるのですが😂
安定感のある作品では伝えられない、人物の織りなす複雑な関係性や心情をリアルに描写したものをお届けできていたら良いな、と思います。

最後に、タリータウンとは関係ありませんが、ミュージカルの中でもスリリングでかっこいな、と思っているお気に入りの演奏を載せます…!何バージョンか同じ曲を聴き比べたのですが、ダントツでリスキーな演奏だと思っています笑

また、ご一緒した俳優の山野靖博さんが『タリータウン』について記事にしていらっしゃいましたので、勝手ながらシェアさせていただきます!


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