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鶴瓶の家族に乾杯が来た!①

やらせなのか?

皆さんは『鶴瓶の家族に乾杯』というNHKの番組を

ご存知ですか?

月曜日の夜7:30から放送されていた旅番組です。

鶴瓶さんが日本中を旅して、ステキな家族を探すという

趣旨の番組です。

『鶴瓶の家族に乾杯』で検索すると

『鶴瓶の家族に乾杯 やらせ』などと出てきて、

フラりと立ち寄り、偶然ステキな家族に出会える

なんて、やらせだろうという声もあります。

しかし『鶴瓶の家族に乾杯』はやらせではありません。

なぜなら、ウチに来たからです。

窓の外に笑福亭鶴瓶さん

その日は私と母はいつものように工房でチーズを

作っていました。

作業が一段落して、洗い物をしていると

『コンコン』

窓を叩く音がします。

振り返り、窓の外を見ると、そこには父が。

そしてその隣にはテレビで見た事がある顔・・・

なんと鶴瓶さんがいるではありませんか!

そして、その隣には妖精のように可憐でキレイな

女性がいました。

普段、テレビをあまり見ない私はその時、

知らなかったのですが、(大変、申し訳ありません!)

当時、朝ドラのヒロインをしていた波瑠さんでした!

いつも見ている工房の窓枠がテレビの画面になったような

不思議な光景でした。

テレビの取材という事はすぐに分かりましたが、

『聞いてないんだけど!?』

と若干のパニック状態でした。

実はこれまでも、地方のテレビ局のちょっとした番組に

出させてもらった事はありました。

大抵の番組は事前に電話などでアポがあったり、

現場で打ち合わせをします。

『では、レポーターがこちらから歩いて来ます。』

『この辺に立っていて、レポーターがここまで来たら、
手を降ってください。』

こんな感じで打ち合わせをするので、ピンマイクを

付けてガチガチに緊張しながら、不自然に手を振る。

なんてことがよくあります。

しかし、その日はアポどころか、スタッフとの事前

打ち合わせもありません。

作業後で汗びしょびしょのまま、工房の外へ慌てて

出て行きました。

そこには10名近いスタッフさんが居て、カメラを持った

人、マイクを持った人、田舎の山奥にしては、実に大勢の

人がいました。

完全主役の父

何も分からないまま、工房の外に出た私たち。

『お父さんに聞いたんやけど、美味しいチーズがあるから、食べてってゆうねん。お父さんが』

鶴瓶さんの一言で、私と母はハッとして、顔を見合せます。

そうか、こういう時は試食を出さなきゃ・・・

『今チーズを切って来ますので!』

私は工房の中に戻って、慌ててチーズをカットし、

試食のチーズを持ってきます。

そう言いながら、一口チーズを食べて、

『ホンマ、旨いな。』

『やっぱ、牛乳が旨いんやろ。』

『牛乳はあるんかいな。』

鶴瓶さんが言うとお父さんが、

『おい、鍋に牛乳あったろ』

と母に言います。

すると

『お母さんは忙しいねん。

お父さんが持ってくれば、ええねん。』

鶴瓶さんが言います。

うろたえる父。

そうです。この年代のお父さんは

『おい、お茶』

と言えば、お茶が出てくる。

鍋に牛乳が入っていることは分かっていても、

お玉がどこにあるのか、コップがどこにあるのか

それすら分からないのです。

一瞬で見抜かれる父。

さらに鶴瓶さんは続けます。

『チーズはどこで売ってはるん?』

私が答えようとするとつかさず、

『お父さんに聞いてるんや。』

鶴瓶さんはお父さんに答えさせようとします。

『ネットで売ってるんで・・・。』

答える父。

『ネットってゆうても、色々あるやろ。』

「自社サイトがあります。」とか、

「Amazonで売っています。」などと言えればいいのですが、

ネットを普段使わない父はAmazonもサイト名も知りません。

それを分かって、

『自分んちのチーズがどこで売ってるか、分からへんことあらんやろ。』

『ネットで売ってるんで。』

ひたすら「ネット」という言葉を繰り返す父。

鶴瓶マジック

ご存じの方も多いと思いますが、

NHKは公共放送でコマーシャルは

一切してはいけないことになっています。

実は試食を出した際にチーズの説明をしたのですが、

商品名や工房名を話した私の言葉は

ほぼ全てカットされました。

以前に別の番組でNHKから取材を受けた際にも、

家の中の撮影で、壁にかかっている夢の国のポスターや

子供が着ていたキャラクターの服、調味料も

メーカーが分からないよう裏にする徹底ぶり。

いくらつっこんでも、父の話では

宣伝になりようがない事を見抜いて、

鶴瓶さんは完全に父をターゲットにしていました。

母との馴れ初めなど、父が答えづらい事を質問しては、

しどろもどろになる様子が漫才のようで、

私と母はすっかりただの観客になっていました。

そして時々、波留さんに話を振って、まだ当時はロケに

慣れていない波留さんのフォローも忘れません。

テレビで見る時は本当にどこにでもいるおっちゃんの

ような雰囲気を醸し出していますが、その場の空気を

作り、演出する鶴瓶さん。

その話術にはまり、何がなんだか分からないまま、

気が付けば、撮影が終わり、

スタッフ一同は帰って行きました。

撮影が終わっても、数日間は

「あれは夢ではなかったのか」

と思い、鶴瓶さんと波留さんが来てくれたのが

信じられないくらいでした。

この時はまだ、思いもしませんでした。

後日、あんな大変なことになるとは・・・・。



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