レッド・ホット・スペース

「ジョー!ジョー・カイエン13世!起きろ!」
「ぶふぇ!甘い!」

暗闇の中、唯一のスポットライトに照らされ、上半身を裸に向かれ、椅子に縛り付けられた髭面の男がいた。
その顔面に、バケツ一杯の純度100%、何の混じりけのない許されざる砂糖水がぶちまけられた。
途端、男の右腕に付けられていたデバイスがけたたましい警報を響かせた。

「外せ!」

暗闇の中からパステルカラーの軍服を着た男が現れ、デバイスを外して地面に叩きつけた。
警報は消え、部屋を拷問を受けた男の吐き出す荒い息だけが埋め尽くす。

「あー…クソッタレ。これがスイーティーの歓迎かい?」

「貴様が話をせずに眠りこけたからだろうが!」

暗がりに立つ女はジョーの態度がよほど気に入らないのだろう。
全身から苛立ちを隠しきれていない。
実際、彼女がジョーの処刑を命じられれば、すぐに喜んでジョーをシロップ漬けにするだろう。

「で、何から話したっけ?」

「何も話していないだろうが!一緒に連れてこられた甥は無事なのか聞いてきて、そのあとは貴様の嫁が浮気相手と逃げただの借金があってヤバイだのの身の上話だけだ!」

「そうだそうだ。で、何が聞きたいんだっけ?」

「貴様の先祖の話だ!ジョー・カイエン1世から貴様に至るまでの!」

ジョーは女の目的をもう一度聞き、それを頭の中で反芻して二、三度うめき声のようなものを漏らし、おずおずと口を開いた。

「じゃあ…どれだけ荒唐無稽な話でも、信じるかい?」

「信じてやる。言ってみろ」

「じゃあ、あれだよ。漁夫王だとかアーサー王だとか。そんな騎士たちの時代から始まって…」

「は?」


―辛辛辛辛辛―


「ジョー!急いで!」

瓶の中の姫の頭上から赤く輝くオリーブオイルが注がれる!
このままでは数分で姫の辛口オイル漬けの完成だ!

「死ねい!」

黒き竜の息吹が放たれる!
ジョーはブルーベリーを塗られたソードを抜き放つ!
姫を救うため騎士は邪法に手を出したのだ!

【続く】