自分がバンドネオニストである限り、バンドネオンの良さをもっと世に伝える責任みたいなものが、ある(鈴木崇朗×Sakurako)
読んだら誰かに話したくなる『明日のタンゴ』今回のゲストはバンドネオニストの鈴木崇朗さん!このサイト立ち上げて初のミュージシャンとの対談です。そもそも、バンドネオンってどんな楽器?そんな方はコチラから!
日本のバンドネオン界を引っ張り、活躍する今話題のバンドネオニストとSakurakoが、ゆるっと対談しました。
書き手:Sakurako
-Profile-
鈴木崇朗...札幌生まれ。
2001年よりバンドネオンを小松亮太氏に師事。
2005年には小松亮太&オルケスタティピカのメンバーとして南米ツアーに参加し、ペルー、パラグアイ、アルゼンチン、ブラジルで公演。
同年、単身アルゼンチンに留学し、オスバルド・ モンテス氏に師事。
また同年小松真知子&タンゴクリスタルのメンバーとして、アルゼンチン サンルイス州で行われた国際タンゴフェスティバルに参加。
2007、2008年にはアルゼンチンに留学し、
フリオ・パネ氏、ネストル・マルコーニ氏に師事。
2009年には2×4Tokioのメンバーとして、
アルゼンチン バリローチェで行われた世界タンゴサミットに参加。
また、Bar Sur、Biblioteca Nacionalでのリサイタルに参加。
2010年にはオルケスタ・アウロラのメンバーとしてアルゼンチン ブエノスアイレスでのレコーディング、ブエノスアイレスタンゴフェスティバルでの演奏、ウルグアイ モンテビデオでの演奏に参加。
2014年、2015年とアンドレスリ・ネツキー楽団のメンバーとして国内ツアーに参加。
日本テレビ系連続ドラマ『家売るオンナ』(2016年)、
『今からあなたを脅迫します』(2017年)、
『家売るオンナの逆襲』(2019年)では、メインテーマ、劇中音楽の演奏に参加。
また、テレビ朝日系アニメ『ドキドキ☆プリキュアアラモード』(2017~2018)、
TOKYO MXほかで放送『ボールルームへようこそ』(2017年)、
『ハクメイとミコチ』(2018年)では、劇中音楽の演奏に参加。
NHK BS8K(4K)『国宝へようこそ』(2019年)の番組音楽の演奏に参加。
NHK BSプレミアムドラマ『黄色い煉瓦』(2019年)、
フジテレビ系連続ドラマ『10の秘密』(2020年)、
テレビ朝日系連続ドラマ『アリバイ崩し承ります』(2020年)では、メインテーマ、劇中音楽の演奏に参加。
BSフジ『旅する侍キュイジニエ』(2020年)のメインテーマ曲に演奏参加。
日本テレビ系連続ドラマ『35歳の少女』(2020年)の劇中音楽に演奏参加。
2019年10月〜11月、テレビ東京系『100年の音楽』に5週出演。
これまでに、あがた森魚、大貫妙子、坂本美雨、渡辺えり、姿月あさと、杉本彩、川井郁子 等と共演。
小松真知子&タンゴクリスタル、西塔祐三とオルケスタティピカ・パンパ、オルケスタ・アウロラ等のメンバーとしての演奏をはじめ、現在国内外でのコンサート、レコーディング等で活動中。
また自身のグループ【鈴木崇朗cuarteto】を主宰し、2020年3月、1st アルバム『Toda mí vida』をリリース。
鈴木崇朗...鈴 Sakurako...桜
きっかけは、サントリーのCM
桜 バンドネオンを始めたきっかけが、12歳の時にテレビCMで聞いたピアソラの『リベルタンゴ』だったそうですね。ピアソラ聴いて「かっこいい!」って思える12歳って、稀だったんじゃないですか?
鈴 そうなんです。当時のウイスキーのCMで、チェリストのヨーヨーマが弾いていて。最近の若い子たちも、聞いたら惹かれると思いますよ。
桜 うーん、少なくとも私は小さい頃「チェロ」って楽器のことも知りませんでした笑
鈴 僕は小さい頃からピアノとヴァイオリンを習ってたから、その影響もあるかもしれないです。
桜 15歳で、小松亮太さんのところに弟子入りしたんですよね。
鈴 そうですね。CMでヨーヨーマの曲を知って、それから小松亮太さんのことを知りました。小松さんのアルバムは全部買って聞いたな…。たまたま、僕の出身の北海道に公演で来たから、中学のときにドキドキしながらひとりで聞きに行ったんです。楽屋にサインもらいに行ったら、物珍しそうに見られたような気がします。笑
そのとき小松さんに「バンドネオンやってみたら?」って言われて、その気になっちゃったんです。その出会いがきっかけですね。
桜 19歳のときには小松亮太さんの楽団の南米ツアーに参加されてますね。それから十数回渡亜してるそうで。
鈴 なんだか、向こうの雰囲気がしっくりくるんです。街にはタンゴが溢れてて、ワインもお肉も美味しくて、風景にも惹かれます。
桜 向こうに行ったら、「音」だけではなく「踊り」も街中で見れるそうですね。鈴木さんは、踊りの方は...
鈴 実は、見るのは好きなんですが、踊るのは苦手なんです。なんていうか、目の前に人がいると緊張しちゃうというか。ましてや、初めて会った人といきなり踊るなんて、、、!手に汗びっしょりになっちゃいます。
バンドネオンの音色と「郷愁」「哀愁」
桜 アルゼンチンタンゴって聞くと、どうしても「官能的」「愛憎」「エロス」っていう言葉がみんなの念頭にある気がします。だけどわたしは、それって「なんだかなぁ」と思うんです。なんていうか、「日本人のわたし」が表現するものと今の言葉がマッチしないというか...見る側の感じ方はそれぞれなので、別にそれがどうこうってわけじゃないんですが...なんだか違和感。バンドネオンも「望郷」とか「物悲しさ」といった言葉と切っても切り離せない楽器ですよね。
鈴 タンゴには絶対についてくる決まり文句ですね。移民の音楽なので、そりゃそうなんだとは思います。だけど、まだ音を聞いてもないのにキャッチフレーズのようにさっきのワード使われるのは抵抗ありますね。
桜 そうなんです!同じ楽器でも、表現者によって全く音も違ってくるじゃないですか。ちなみに、「悲しみの」とか「愛憎渦巻く」とか、自分のスタイルに何かタイトルつけるとしたら、なんだと思いますか?
鈴 えー、なんだろう...(しばらく沈黙)「調和」かな...
桜 なんだか意外です。バンドネオン自体は楽団の要というか、存在感たっぷりなのに。
鈴 アンサンブルを楽しみたいっていう気持ちが強いので、常に周りと調和することを考えてるんです。僕は丁寧に弾くのが好きだから。だけどそれはタンゴというジャンル的にはどうなんでしょうね。本当はもっと、溢れんばかりのエネルギーを吐きだす、くらいの方が「バンドネオニストらしさ」みたいなものが出るのかもしれない…。枠に収まりすぎない、だけど丁寧に、を心がけてます。
桜 ダンサーとコラボするときに、何か意識することはありますか。
鈴 やっぱり、踊りやすく弾いてあげたいって気持ちは強いです。
桜 そうなんですね。わたしはタンゴって音楽があって、始めて成り立つものだと思ってて。あえて順番つけるなら「音楽>ダンス」みたいな。だから、ミュージシャンの方々の生演奏ならではの世界に、いかにダンサーは合わせられるか、ていうのがカギだと思ってます。
鈴 確かに、そこが難しいところなんです。無難にまとめすぎちゃうと音楽的に「それってどうなの」って疑問に思うし、生演奏の良さも半減してしまいそうで。だけど、だからといってアレンジが過ぎると踊りの邪魔をしますよね。「踊りやすい音楽」と「音楽家が弾きたい音楽」の両立って難しいと思います。いろいろ葛藤はありますが、でもやっぱりダンサーさんと共演するときは「踊りやすさ」を特に意識して弾くようにしていますね。
桜 鈴木さんの「調和」の心がここでも発揮されてますね。
鈴 笑笑
桜 お気に入りの曲ってありますか?
鈴 うーん、好きな曲は数えきれないくらいあって…。マイブームはSebastian Piana(セバスティアン・ピアナ)の「El Pescante(エル・ペスカンテ」って曲です。
桜 どんなところが気に入ってるんですか?
鈴 やっぱり、メロディーです。タンゴの良さの一つは、僕にとってはメロディーなので。耳に残るとか、そんなんじゃなくて、とにかく「メロディーが良い!」説明下手でスミマセン。それしか言えないです。笑
メロディーといえば、好きな作曲家のひとりにファン・カルロス・コビアンって人がいて、その人の作る曲はだいたい好きですね。
初アルバムを作成
桜 2020年の3月に、自身初となるCD「Toda mi vida」をリリースされましたね。
鈴 鈴木崇朗cuartetoっていう、自分のバンドがあります。既存の曲のアレンジだけじゃなくて、オリジナルの曲も入れてるんですよ。このご時世だからまだライブ公演はできてないんですが…。今はオンライン販売が中心です。
桜 どんなところに注目したらよいですか?
鈴 「エル・マルネ」とか「7月9日」とか、古き良きタンゴ曲のオリジナルアレンジを入れています。原曲を聴いてもらってから、僕らのアルバムを聞くと、比較ができて面白いと思います。「こんなアレンジしたんだ」っていうのが分かるので。このバンドで、国内、国外問わず公演活動するのが今の目標ですね。
桜 これから、どんな弾き手を目指していきたいですか。
鈴 僕は、誰になんと言われても自分の好きなことをやっていきたいです。じゃあ好きなことって、なんだろう、って話になるんですが…。作曲やライブを思ったとおりに実現させることはすごく大切です。
だけど、もうちょっと大きな括りで考えると、僕は自分がバンドネオニストである限り、タンゴの良さ、バンドネオンの良さをもっと世に伝える責任みたいなものが、あると思うんです。
だから、しっかりしたレベルのもので提供したいと常に考えてます。というのも、お客さんの前で弾くとき、必ず1人や2人は初めてバンドネオンを聴きに来た、ていう人がいるわけで。そんな人たちに「タンゴって、意外とショボい音楽なんだ」って思われるのは絶対イヤなんです。そしたらその人はもう2度とタンゴを聞かなくなる。そんなことにはなってほしくない。ただでさえ弾き手が少ない世界だから、情報も少ないし、比べる機会も少ない。だから、自分の作る作品に絶対、妥協はしたくないんです。
桜 それは、われわれダンサーも全く同じ気持ちですね。
鈴 そうですよ。だから僕ら、責任重大なんです。これからのタンゴファン、あるいは後続のバンドネオニスト、タンゴダンサーが増えていくかどうかがかかっている。
桜 肝に銘じておきます...!
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