人の影
どういう経緯だったか、私は既に引退していたタロットカードの重鎮、
辛島宣夫との接触に成功した。
姉が持っていたタロットカードの作者である事は子供の頃から知っていた。
電話で思いを告げ、ぜひ会おうという事になった。
だが、タロットはもうやらない、という事だった。
残念がり、何故かと尋ねる私に辛島宣夫は言った。
「人の影を見るのがもう嫌になってね」
だが、ホロスコープは見てくれるという。
今、暦を人に貸しているが、私と会う日までには帰って来るらしく、
出生図を確認しておくが、引退してるから金は受け取らないと言った。
後日、谷中で会おうという事になった。