和辻哲郎の日本倫理思想史が面白い

ちょっと前から読んでいる和辻哲郎の日本倫理思想史(岩波文庫)が面白い。

まだ通読はできてなくつまみ読みだけど、第5篇の第3章「キリシタンの伝道と儒教の興隆」

織田信長から家康あたりのキリスト教への対応が書いてあるけど、意外なことがいっぱい出てくる。

織田信長の比叡山焼き討ちはみんな知ってると思うけど、背景は武士は仏教を嫌っていた。そこにキリスト教が入り込んできたらしい。

そして、キリスト教が入ってきた頃,南米でのスペインの横暴ぶりが伝わってきて、キリスト教布教禁止の流れらしい。
この本にはもちろんないけど最近ではさらに日本人が海外に奴隷として売り捌かれていることも判明し(ルシオ・デ・ソウザ)、それで秀吉はキリスト教を禁止にしたという説もある。

さらに、当時のスペインのカトリックは魂の不滅を力説していたらしい。仏教は輪廻転生を断ち切ることが救済の宗教なので、魂が不滅なのは輪廻転生が続く解脱してないことと解釈して取り合わなかったらしい。

当時のキリスト教への質問は
悪魔は神の恩寵を失ったにもかかわらず正しい物を滅亡させることもある力を持つのはなぜか?
神が愛の神であるならば人が罪を犯さないように作るはずなのになぜ?
神が人間に自由を与えたのならば最初に悪魔が蛇の形をして誘惑した時に、教えてくれなかったのはなぜ?
人の精神的本質が清浄であるならば何故に肉体にある原罪によって汚されるのか?
善行をなすものが現世において報われず悪人が栄えているのはなぜ?
キリスト教の神が全能ならなぜ今頃まで日本にあらわれなかった?
154ページ

面白すぎる。どう言う回答をしたのかQ A集があれば読みたい。

なお、神は日本の神を指すので当時はデウスといい、愛は慈悲と言っていたらしい。

さて、フーコー的な興味として、当時、告解や告白はどのようなことがなされたのか?
告白に基づく罰則規定集は残っているか?
修道院は作られようとしたのか?
カトリックの戒律は日本に伝わったか?
ここら辺まとめるだけで論文書けそう。

最後に儒教であるが、時の政権は、キリスト教が広まって弾圧するが仏教を持ってくるのは面白くないので儒教を持ち上げたらしい。敵の敵は味方という理屈か。

したがって儒教は古くから持ち上げられたり下げられたりで一筋に儒教がわれわれの心を縛ったとは言えない感じ?

パレーシアと論語や白氏文集の評定、ネガティブに働いた概念を考えたいので。もう少し和辻哲郎読んで考えないと、パレーシアの日本版系譜を始められない感じです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?