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美術史と私と

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2020年6月の記事一覧

「私の仕事は陶器を作るのではなく陶器を利用しているのです」

私が美術作品、特に工芸作品をみるときによく重要な示唆を与えてくれる文章のひとつです。 これについての詳しくはまたいつか。 私の陶芸観 私は陶器が大好きです しかし私の仕事は陶器の本道から完全にはずれています 私の仕事は陶器を作るのではなく陶器を利用しているのです 私の作品は外見は陶器の形をしていますが中身は別のものです これが私の仕事の方向であり、また私の陶芸個人作家観です 加守田章二 個展(ギャラリー・手)、1971年

「藤色」についてのはなし

先日鎌倉にある鏑木清方記念美術館へ足を運んだ。その時に展示されていた一つの作品とそこにあった「藤色」についての話をしようと思う。 展示室にあった作品の並びの中の一つに、着物にあしらわれた藤の色が印象的なものがあった。綺麗な色だと思いよく見てみると胡粉で小さな藤の家紋が描かれてある。よく見る藤の家紋のように両側から花が垂れ下がっているものでなく、おそらく片手藤と呼ばれるタイプのものであった。家紋の藤と染めの藤を合わせるところに、積み重ねられた清方の丁寧な観察や彼の感性といった