「藤色」についてのはなし
先日鎌倉にある鏑木清方記念美術館へ足を運んだ。その時に展示されていた一つの作品とそこにあった「藤色」についての話をしようと思う。
展示室にあった作品の並びの中の一つに、着物にあしらわれた藤の色が印象的なものがあった。綺麗な色だと思いよく見てみると胡粉で小さな藤の家紋が描かれてある。よく見る藤の家紋のように両側から花が垂れ下がっているものでなく、おそらく片手藤と呼ばれるタイプのものであった。家紋の藤と染めの藤を合わせるところに、積み重ねられた清方の丁寧な観察や彼の感性といった