なぜフロントブレーキの方が「効く」のか?

あるブログで、こういう記述をたまたま見かけました。

ロードバイクのリアブレーキは、パニックブレーキみたいに強く握ると簡単にホイールがロックしてスリップします。
それに比べるとフロントブレーキはリアよりはロックしづらいのです。
これの理由ですが、そもそもリアに荷重がかかっているわけで、リアタイヤには人間の重みがたくさんかかっているため、タイヤを下に押す力が強くなるためです。

本来、引用元を書くべきですが、これは完全に間違いなので、書かないでおきます。

リアブレーキがロックしやすい、というのはそのとおりです。ゆっくり平坦を走っているときに、強めにリアとフロントを交互にかけてみれば実感できるでしょう。

でも、それは、「リアに荷重がかかっていて、タイヤを下に押す力が強くなる」からではありません。この筆者はなにか誤解されているようです(もしくは単に書き間違ったか)。

タイヤを下に押す力が強くてロックしにくいのはフロントタイヤです。なぜなら、ロックというのは、タイヤと地面の摩擦力に比べて、リムとブレーキゴム(もしくはディスクローターとパッド)の摩擦力が大きい場合に起こります。

そして、地面との摩擦力はタイヤを地面に押し付ける力(垂直抗力)に比例します。つまり、垂直抗力が大きいほど、ロックしにくい、わけです。

普通、ブレーキをかけたとき、垂直抗力はフロントタイヤで大きくなります。なぜなら、慣性があるから、です。

慣性とは、動いているものはその速度で動き続ける、止まっているものは止まり続ける、という物体がもつ性質です。電車に乗っているとき、ブレーキがかかると、前につんのめるのも慣性のためです。

なので、自転車でブレーキをかけると、自転車は止まろうとしますが、人間は前に行こうとするので、フロントタイヤにより荷重がかかります。逆に、リアタイヤの荷重は抜けます。場合によっては、

フロントタイヤ摩擦力 > ブレーキ摩擦力 > リアタイヤ摩擦力

となり、フロントは滑らないけど、リアタイヤはロックして滑ってしまう、ということが起こるわけです。安全に止まる・減速するためには、

フロントタイヤ摩擦力 >  リアタイヤ摩擦力 >ブレーキ摩擦力 

のように調整しないとなりません。

ついでに。ずいぶん昔ですが、ある本か雑誌の記事で「リアブレーキをかけることでリア側の荷重を増やしてバイクを安定させる」みたいな記述をみたことがありますが、これも完全に間違いだというのも上の話からわかると思います。リアだろうがフロントだろうが、ブレーキをかければ前輪荷重になります。だから、リアブレーキだけ強くかけると簡単にリアタイヤがロックするのです。



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