(珈琲ブレイク)ファンデルワールス力とは?

なぜか自転車関係で、"ファンデルワールス力"("か”じゃないです、"りょく"です)というキーワードを最近目にするので、ちょっと補足を。

普通、チェーンの表面は金属メッキされていると思いますが、違う種類の金属ががっちりくっついているのは、共有結合というメカニズムのせいです。原子は電子と原子核からできていますが、金属中では他の原子の間を電子が移動できることによって、「糊」のような働きをしています。そのため、固体の金属はがっちりとしているわけです。一方、そこに別の種類の金属を接してもそんなに簡単にはくっつきませんが、表面の原子同士が電子を共有することによって、しっかりとくっつく場合があります。

自転車の整備なんかでもよく「かじる」という言い方をすると思いますが(たとえば、放置していたサドルが抜けなくなったり)、同種の金属どうしおこりやすいと思います。これは、摩擦のところでも説明した金属表面の微小な凸凹が噛み合ってミクロに融合したもの(真実接触点が広がって、静止摩擦係数がめちゃめちゃ大きくなった状態、と言ってもいいかもしれない。融合点では共有結合が起きている)や、摩擦熱によって融着するなどいろいろメカニズムがあるようです。チタンはかじりにくい、と言われていますが、逆に言うと他の金属に強いめっき層をつくったりするのが難しいとも言えます。

さて、ファンデルワールス力ですが、高校物理や化学でも言葉は習うのですが、あまりかっちりした定義がありません。原子やイオン、分子の間に働く力(引力 or 斥力)の総称だからです。基本的には、これらの粒子の中の電荷の分布の偏りよって、電磁気的な力(例:プラス電荷とマイナス電荷が引き合う、磁石のN極とS極が引き合う、など)が働くことによって生じます。

ファンデルワールス力は共有結合に比べると弱いです。したがって、ファンデルワールス力でくっついているというチタンの粒子は、クロムメッキの金属よりもずっと剥がれやすいわけです。(了)

(6/1/2020追記)メッキについてのよい参考資料を教えていただきました(thanx to jamさん)



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