高校1年 秋②体育祭無双
地区大会を終えて学校では毎年恒例の体育祭。
僕の通った高校ではバスケ、バレー、ソフトボールに分かれて全学年トーナメント戦が開催される。
僕とMは文化部だけど、元バレー部。
しかもMは元エースアタッカーで、僕はセッターだった。
二人揃ってバレーボールを選択。
いくら弱小チームとは言え、部活で3年間もやっていたのだ。
初心者に負けるわけがない。
さて、ここで一緒に練習してみて気付いたことがある。
Mがサーブをレシーブする時に、やたら甲高い声で
「いーっち、にー、さーん」
と掛け声を掛けるのも、
膝と肘にやたらとでかいサポーターを付けるのも
アタックする時にものすごい内股なのも、
全ては彼がママさんバレー出身者だったからだった。
話を聞いてみると、小学校からバレーボールをやりたかったが
バレーボールチームが近くになかったからママさんバレーに混ぜてもらっていたのだそう。
改めてみると彼はめちゃくちゃ上手かった。
どうしてこんなに上手いのに弱小チームだったんだろう、と彼と話をすると
と彼は笑って答えた。
こうして、ママさんバレー出身の強力なアタッカーとセッター、そしてやたら運動能力の高い野球部たちを要した僕らのチームは1年生ながら快進撃を続け
まさかの全校2位の快挙を成し遂げた。
バレー部入れば良かったな笑
クラスみんなでやった打ち上げはサイコーだった。
秋も深くなると、彼女も進路どうしようといソワソワし始めていた。
彼女はバンドではなく、安定した調律師になりたいと言って専門学校の進学を考えているようだった。
ただ、破天荒で学校もほとんど来ていないような人だったので
そもそも卒業できるのか、というギリギリのレベルだった。
僕は毎朝部室に行って彼女を待っていたが、彼女が来ない日も少しずつ増えていっていた。
学校に行きたくない、と。
仕方ないから部活が無い日などはなるべく彼女の家に行くようにした。
そりゃ初めての彼女だし、毎日会いたいじゃんね!
でも、なぜかこのあたりからオタク趣味全開になってきた彼女は
今まで以上に同人誌を描いたり、同人グッズを作ったり
コスプレイベントに行ってばかりで
余計に学校に来ることがなくなっていって
徐々に距離が空いていってしまった。
今考えたら、あれは彼女なりの生きるための現実逃避で必要なことだったんだと思う。
でも、当時の僕はまだそれを受け入れるだけの器がなかった。
また、前みたいに一緒に過ごせたらいいな。
そう思いながらも、どうしていいかやからなかった。
彼女が好きなバンドの曲を聴いて感想をメールしたり、些細なやり取りをすることが
唯一の繋がりになってきていた。
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