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高校3年 春②自らイメージしてしまったものを超えてくるのは他人

新入生歓迎公演が終わった。

残りは6月末の定期公演のみ。

ここで大事なのは、何を上演するのか。

脚本選びで滑り倒した過去のようなことは絶対したくない。

幸いなことに県大会での高評価のおかげで、

"みっちーが脚本を書いてくれるならそれでいこう"

みたいな空気が部活全体に出来ていた。

ちなみに、その頃僕はみっつの脚本を並行して進めていた。

ひとつめは、内気な女の子が主人公の精神世界を描いたダークファンタジー。完成度80%

ふたつめは、日中戦争の引き金になった盧溝橋事件を題材にした歴史モノ。完成度50%

みっつめは、ハンセン病を患っていたキリシタン大名、大谷吉継の生涯を大きくフィクションを交えて面白おかしく、そして悲しく描いた歴史モノ。完成度30%

僕は脚本を書くときに設定や背景をめちゃくちゃ考えてから書く。だからスタートするまでにかなり時間がかかる。

そして、まずは言いたいセリフを考えて、それを言わせるために必要な会話を逆算して埋めていくという進め方をしていた。

だから、言いたい言葉や伝えたいメッセージが見つからないとまったく進まない。

それを改めて鑑みて、この3つを全部高いクオリティで期限内に完成させるのは無理がありそうだと思った。

そこで、もっとも完成に近いひとつめのやつに絞って進めていくことにした。

"内気な主人公のダークファンタジー"

とは言っても、ただ暗い話なんかはしたくない。

前半は笑いどころ満載に。

感情移入してきたあたりから、ゆっくりダークファンタジーが混じり合うのがいい。

これを僕の引退作にしよう。


今まではみっつを同時に進めていたから進むスピードはめちゃくちゃ遅かったのだけれども

一つに絞った途端、びゅんびゅん進んだ。

そもそも僕は並行していろいろ進めていくのが得意ではなかった。

やりたいひとつを徹底してやる。

ここに特化して進めていったら自分でも驚くほどスムーズに脚本が完成した。

今回は動きを軸に進めていきたい。

台詞回しで進むこれまでの舞台とはえらい違いだ。

つまり言葉だけではない「表現力」がなによりも重きを置く。

だからこそキャスティングも妥協したくない。

そんなことを日々考えていた。


ちなみに、これまでの舞台はキャスティングは、立候補した中から演出が決めていた。

でも、今回はキャスティングを決める前にとある事件が起きていた。

同級生の静かなオタクの女の子が、

「私も出たい!でも、私はみっちーから嫌われてるから役をもらえない。なんとかしてほしい!」

と部長に泣きながら直談判していたらしい。

違う。嫌いなんじゃなくて、単純に声が小さくて客席にいると聴こえないから、大きなホールの時に台詞多めの配役にできなかっただけよ。

校内の公演の時とかはちゃんと選んでるじゃん。

それに声が通る人は好きとか嫌いとか上級生だろうが下級生だろうが関係なしに選んでる。

とはいえ、正直この出来事を僕はやっかいだなと思ってしまった。

ただいい舞台を作りたいだけなのに、気に入ってるかどうかで配役決めてると思われるなんて心外だし

そんなレベルで俺の最後の脚本で主演取ろうとか思われてることに内心、めちゃくちゃ怒り狂ってた。

ただ、ここで遺恨を残すと全体の士気に関わる。

そこで、今回の脚本に関しては演出が決めるのではなくて、オーディションを開催してキャスティングは無記名での投票制にすることにした。

みんなで決めた配役なら諦めも付くだろう。


ちなみに、今回の脚本にはまぁまぁな人数の登場人物がいるが、今やそこそこ部員のいる我が部の全員に台詞付きの役が回るわけではなかった。

主人公のJK
主人公の親友JK
主人公が大事にしているおもちゃの人形のコスプレをした子ども
主人公の父
自称野球団のリーダー
自称野球団の高木ブー
自称野球団のエセアメリカ人
自称野球団の末っ子
自称野球団の末っ子の弟(本当の意味で末っ子。あと実は女の子)
生命の音楽家(ストンプする人 たくさん)
仮面を被った化け物たち(たくさん)

僕は絶対に主人公の父をやりたかった。

それもあってめちゃくちゃ台詞はこだわった。

自分が演出なら自分をキャスティングするだろう。

ただ、今回はオーディション。

でも大丈夫。

だって、これは俺をイメージして作ったキャラクターだから笑

このキャラには自信がある。

ちなみに、泣きながら直談判してきたオタクの女の子は主役と準主役にエントリーしていた。

高木ブーa.k.aながぶーは、やはり高木ブーにエントリーしてきた笑


そしてオーディションが始まった。

それぞれ、配役ごとにエントリー者が課題のシーンを演じていく。


野球団リーダーは部長M
野球団高木ブーはながぶー
野球団エセアメリカ人はあそうたまきこーじ
野球団末っ子は2年生の弟キャラの子
野球団末っ子の弟(なんて紛らわしい笑)は、新入部員の女の子
準主役は訛りが激しすぎるけど圧倒的に発声も演技力もある三年生に。

そして主人公は、まさかの2年生の女の子になった!

オタクの女の子には残念だったかもしれない。

でも、誰が見ても明らかな実力さがあった。

そして、僕が恋焦がれた主人公の父役は無事に

後輩の男の子になった笑

なんでやねーん!

生徒総会で捉えた軽快な台詞回しとか

突飛に始める意味不明な行動とか

自分が演じるならこうだ!みたいなイメージで脚本を書いてきたけど

あいつは僕のイメージを超える変なお父さんを演じてきやがった。

完敗。

まぁ、仕方ないよ。

自分の実力不足のせいだ。


残ったメンバーでストンプや化け物を割り振る。

僕は両方のパフォーマンス指導もあるから、両方にメンバーとしても参加することにした。

そして、演出家としてこのメンバーの舞台を最高なものにしてやろう!

そうやって、裏方に徹底することにした。


悔しくなんかないもん。

悔しくなんかないんだからね!


当時舞台向けの音楽を探していてツタヤで借りたこのCD。

その中からビビっと来たものがあった。

スタンプはこれで決まり!!

様々なスタイルで僕は僕の舞台を表現する!!!

演技だけじゃないもんねっ!



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